訪日外国人を集客したいイベント主催者がつまずくのは、旅行前にチケットを買ってもらえない段階です。日本語しかない購入ページ、Alipayが使えない決済手段で予約を閉じて終わりになります。

日本政府観光局によると、2025年1〜3月の訪日外国人数は1,053万人を超え過去最速で回復しています。

飲食店や小売と違い、イベントは旅マエのオンライン購入が来場の前提になります。チケット購入の壁を外すことが、インバウンド対策で最初に手をつける場所です。

この記事では、訪日客を取りこぼす場所と、認知・購入導線から着手するインバウンド対策の順序を解説します。

訪日客を取りこぼしているのはどこか

訪日客の取りこぼしの多くは、会場に着く前に完結しています。チケットを買えない、支払いが通らない、入場で詰まる。いずれも会場の外で起きる問題です。会場の接客や多言語メニューから対策を始めるケースは多いですが、イベントやチケット販売の現場では、客が会場にたどり着く前の段階で離脱が積み上がっています。

旅マエのチケット購入でつまずく

訪日客は旅行前に行き先を絞り込みます。スマホで施設やイベントを調べ、予約できるものから「やることリスト」に入れていきます。事前にネット予約・発券ができる体験ほど、このリストに残ります。

たとえばチームラボプラネッツは外国人比率が高く、国籍もさまざまです。言語によらず楽しめることに加え、旅行前にオンラインで予約・発券まで済ませられる点が大きいです。買う段階で言葉の壁にぶつからないからです。

逆の例もあります。あるボルダリング施設では、入会書類と説明ビデオが日本語のみで、外国語に対応していませんでした。その結果、興味を持った外国人客が参加できない場面が生じています。

旅行前に「このイベントのチケットを日本語以外のサイトで買えますか」と問い合わせが来ても、対応できなかった主催者もいます。購入ページが日本語だけだと、客はそこで離れます。会場の準備をどれだけ整えても、買えなければ来場はゼロのまま。取りこぼしの最初の地点は、ここにあります。

インバウンドチケットの仕組みや導入のメリットは別記事でまとめています。

インバウンドチケットとは?訪日外国人向け販売のメリット・導入施設・注意点など解説!

決済通貨が合わず買えない

買う気はある。でも支払えない。これが2つ目の壁です。

たとえばAlipayやWeChat Payに対応していなかったため、中国人グループが購入をあきらめた事例があります。使える決済手段がそろっていれば取れたはずの売上が、そのまま消えました。逆に、AlipayとWeChat Payを導入した店舗では、中国語の案内と合わせて購買率が上がった事例があります。

現金しか使えない場面も訪日客を驚かせます。Suicaなどの交通系ICは外国人の多くが持っておらず、手元の円が足りなければその場で詰まる。事前にカードやQR決済で買える導線があれば、当日の金銭授受そのものを減らせます。

海外発行カードが通る決済や販売通貨の整え方は、以下の記事で手順を追って解説しています。

チケット海外販売のやり方!買えない壁を解く決済と集客を主催者向けに解説

当日の入場で言語に手間取る

最後の壁は会場の入口です。外国人客が来ても、スタッフが英語を話せず、説明に手間取って列が止まることがあります。

実際に、後ろに並ぶ客の待ち時間が延び、入場が滞ります。スタッフは語学対応に追われ、本来の運営から手が離れます。旅マエの認知と購入を整えても、この入口で体験の印象が崩れてしまっては元も子もありません。

旅マエにイベントを知ってもらう方法

購入や入場で詰まるより前に、もう一段深い取りこぼしがあります。イベントの存在を旅行前に知られていない段階です。購入するかどうかは、まずイベントを知って旅程に入れようと思ってから発生します。

日本に着いてから現地でイベントを探す訪日客は少なく、旅行前にスマホで行き先を調べてから来日するパターンが主流です。旅マエの訪日客がどこで情報を集めているかを起点に、接点を整えていきます。

Googleマップに多言語で登録する

地名や駅名を打ち込み、表示された施設やイベント会場を一覧で眺め、写真と口コミから行く先を決めていきます。訪日客が旅マエにも旅ナカにも繰り返すのが、この地図アプリでの検索です。会場の基本情報が母国語で出るかどうかが、最初の関門になります。

営業時間、開催場所、入口の写真。日本語でしか登録されていないと、英語や中国語の検索画面にはうまく表示されず、候補から外れます。地図上で見つけてもらえなければ、どれだけ良いイベントでも旅マエの検討リストには入りません。

口コミの言語も効いてきます。Googleマップの口コミは、スタッフが英語で対応してくれた、入場がスムーズだった、といった先に行った人の声が並ぶ場所です。外国人でも問題なく入れたという一行が、迷っている訪日客の背中を押します。

そのため会場のGoogleマップ情報は、営業時間と場所と写真を多言語で整え、寄せられた口コミに英語で返信できる体制を持っておくと、検索結果に並んだときの印象が違います。

2.5次元ミュージカルの会場が取り組んだ多言語対応の具体例は、実際の施設事例として参考になります。

2.5次元ミュージカルのインバウンド対策を解説!外国人観客を引きつけるPR戦略と劇場設備

海外向けチケット販売サイトに掲載する

訪日客は来日前から、どこへ行きどこで食べるかをインターネットで調べて予約するのが当たり前になっています。チケットも同じです。海外向けの販売サイトや、自国語で決済まで完結するページに掲載されていれば、その場で予約して旅程に組み込みます。ところが現地に着いてから会場の窓口で買うしかないイベントは、リストに入る前に候補から落ちてしまいます。

そのため掲載先は国内の予約サイトだけにとどめません。訪日客が旅マエに見るのは、自国でよく使われる旅行系のプラットフォームです。そこに枠を出し、自国語で日付を選び決済できる状態にしておくことが、認知から購入への最短の橋になります。ある体験施設は海外向け販売サイトでの掲載と事前発券に対応した結果、来場者の国籍構成が大きく変わりました。

海外在住者向けにチケットを販売する手順は、別記事で解説しています。

海外在住の人に向けてチケットを海外販売する方法とは?おすすめの販売方法を紹介!

SNSで旅マエにイベントを知らせる

訪日客は旅行前にInstagramやTikTokで行き先を調べます。写真や動画を見て、ここに行きたいと興味を持ってから旅程を組みます。

会場の見た目が伝わる写真、当日の熱量がわかる短い動画。文字を読まなくても何が体験できるかが一目でわかる投稿は、言語の壁を越えて拡散します。店名やイベント名のハッシュタグを用意しておけば、SNS検索でたどり着いてもらいやすくなります。投稿は来場後の口コミにもなり、自国に戻った訪日客から海外のフォロワーへと広がります。

外国人がチケットを買えるようにする方法

イベントの存在を知ってもらえても、最後に「買えない」で止まる。これが訪日客の取りこぼしで大きな壁です。日本語のページ、円建ての決済、現地での現金やり取り。

日本人なら無意識に越えている段差が、外国人の前では高い障害になります。決済までの導線を外国人の目線で組み直す必要があります。それが集客の最後のピースです。

自国語で買える購入ページを用意する

買いたい気持ちがあっても、ボタンの意味が読めない。入力フォームの項目が分からない。エラーが日本語で出る。途中で離脱されます。

そこで英語、中国語、韓国語、アラビア語と自分の言葉で最後まで進める購入ページがあれば、この離脱は防げます。多言語対応のチケット販売プラットフォームであるTicketMeなら、購入から発券までを訪日客の母語で完結できます。

当日券を現地で売る発想から、旅行前にチケットを買ってもらう発想へ。購入ページを母語にするだけで、届く見込み客の母数そのものが広がります。

Alipay・WeChat Payなど多通貨決済に対応する

決済の入り口を母国のアプリにそろえると、買う人が増えます。財布を開かなくていい。為替を気にしなくていい。普段使っているアプリの画面が出れば、そのまま指で進みます。それだけで決済の決断が変わります。

たとえば経済産業省傘下の業界団体が2023年にまとめた調査では、韓国、中国、米国など多くの国で国民の半数以上がキャッシュレスを使っています。彼らにとって現金は非常用です。日本に来て急に現金前提の決済を求められると、買う前にためらいが生まれます。

Alipay、WeChat Pay、そして国内のJPQR。来場する国の主要な決済手段をそろえます。決済の選択肢が母国と同じであれば、買うかどうかの判断に余計なハードルが乗りません。

事前購入・事前決済型のチケットにする

イベント当日に現金を忘れた外国人が入場できず、もめる。現地で金額を伝え、外貨を円に直し、おつりを渡す。この一連が言葉の壁の上で起きます。

そのため事前決済型のチケットなら、この場面が丸ごと消えます。旅行前に決済まで済んでいる。だから当日はスマートフォンのQRをかざすだけ。金銭の授受も、言葉のやり取りもいりません。

お金を当日に動かさない設計が、購入者の不安と主催者の手間を同時に下げます。

JPQR Globalで海外QRコードが使えるようになってきた

海外のQRコードを日本の店頭でそのまま使える環境が整いつつあります。2025年7月、大阪・関西万博の会場でJPQR Globalが始まり、訪日客が自国のQRコード決済を使えるようになりました。最初の対応国はカンボジア。経済産業省が業界団体と連携して展開する仕組みで、対応国はアジアを中心に広がっています。

実際に店頭へ置いたJPQRを訪日客が母国のアプリで読み取れば、自国通貨に換算された金額での支払いが完了します。まだ会場限定の段階で、街なかの店で誰でも使える状況ではありません。それでも海外QR決済を受け入れる土台は、万博を起点にもう動き出しています。

当日の会場での迎え方

認知と購入の段差を越えた訪日客は、会場に着いてから受ける扱いで満足度が決まります。入口の案内、決済、通信、退場の動線。事前の準備が整っていても、この当日の動線でつまずけば来場の記憶は悪い方へ傾きます。リピートや口コミにつながるかどうかは、会場で何を用意しておくかで分かれます。

会場と案内表示を多言語にする

会場に着いた訪日客がまず探すのは、入口・トイレ・物販・退場口の位置です。日本語だけの掲示では立ち止まる人が出て、スタッフへの質問が一点に集中しがち。そこで受付・案内サイネージ・順路の矢印を英語と中国語、韓国語で並記しておくと、来場者は自分で目的地へ進めます。

デジタルサイネージなら、時間帯や言語の切り替えもその場で対応できます。表示が読めるだけで、来場後の問い合わせはぐっと減ります。

会場決済も複数手段に対応する

物販やフード、グッズの購入で使える決済は、なるべく増やしておきたいところです。VISAやMastercardのクレジットカードに加えて、来場者が母国で日常的に使うQRコード決済に対応すると、財布を出さずに買い物が完結します。

現金だけの売り場では、両替や小銭の確認で行列の進みが鈍りがちです。とはいえカードもスマホ決済も通る売り場なら、買おうと思った瞬間にそのまま会計まで進めます。

会場にフリーWi-Fiを置く

会場に入った訪日客は、ステージまでの道順を地図アプリで確認し、メニューを翻訳アプリにかざし、撮った写真をその場でSNSへ上げます。ところが海外のSIMやローミングだと通信が不安定になりやすく、スマホが使えないと迷子や問い合わせが増えがち。

来場者が使えるフリーWi-Fiを置いておけば、案内も翻訳も投稿も会場の中で完結。SNS投稿はそのまま、次の来場者を呼ぶ宣伝になっていきます。

入口でスキャンするだけで通せる

入場の段取りは、当日のスタッフ負荷を最も左右する場所です。訪日客がQRチケットを事前に買っておけば、会場入口でスマホをかざすだけで入場が終わります。スタッフは画面を読み取るだけで、券面の言語を読む必要も、座席や種別を口頭で説明する必要もありません。

たとえば英語が話せないスタッフでも、QRコードを読み取れば外国人客をそのまま通せます。受付で言葉のやり取りが発生しないので、列の進みが言語に左右されません。ピーク時に入口へ人が集中しても、一人あたりの処理が短く済み、滞留が起きにくくなります。

紙のチケットだと、半券のもぎりや座席の確認、紛失時の照合で一人ひとりに時間がかかります。一方でQRチケットは購入時点で本人とひもづくため、当日は読み取り一回で完了。多言語のチケット運用が、そのまま入場の速さに変わります。

現地での金銭授受をなくす

入場料や追加チケットを当日に現金で受け取る運用は、釣り銭の準備と通貨の確認に人手を取られがち。海外の客が出した紙幣が本物か、金額が足りているかを確かめる時間も、列の進みを止めます。

ところがチケットを事前決済型にしておけば、会場での金銭のやり取り自体がなくなります。受付に立つスタッフは入場の案内だけに集中でき、現金を扱う緊張からも解放されます。

インバウンド対策の始め方

施策を一通り見ると、どれも必要に思えてきます。ただ、全部を同時に動かす必要はありません。手をつける順番は決まっています。認知と購入導線が先、入場と土台はその後です。

まず認知と購入導線から手をつける

最初に着手するのは、旅マエの認知と購入導線です。会場の言語対応をどれだけ磨いても、来日前の訪日客にイベントの存在が届かず、買えなければ来場はゼロのまま終わります。当日の対応は、人が来てはじめて意味を持ちます。

ところが、順番が逆になっている事業者は少なくありません。多言語の案内板やスタッフの語学研修に先に投資して、肝心の集客と決済を後回しにした結果、整えた会場に客が来なかった事例があります。

認知の接点は、訪日客が旅程を組む時期に置きます。海外向けSNS、現地の旅行情報サイト、宿泊施設での告知。来日前にこのイベントへ行くと決めてもらう接点です。

購入導線は、多言語化と多通貨化の二つを同時に進めます。販売ページが日本語だけ、決済が国内クレジットカードだけでは、行きたいと思った客が買えません。英語・中国語の表示と、来場する国の主要な決済手段に合わせた多通貨決済をそろえます。認知に費用をかけても、買える状態がなければそこで途切れます。

規模に合わせて入場と基本整備を足す

認知と購入導線が動き始めたら、次は当日の入場です。

まず入場のQR化。スマートフォンに表示したチケットをかざすだけで入れる形にすれば、言葉が通じなくても列がさばけます。紙チケットの確認や言語のやり取りで詰まりがちだった入場口も、これで軽くなるはずです。

そのうえで、余力に合わせて土台を足していきます。多言語の案内表示、会場のWi-Fi、外貨やキャッシュレスへの対応。優先度は会場の規模と海外客の比率で変わります。

ただし、規模の小さいイベントなら最小限で足ります。来場者数が増え、海外客の比率が上がってきた段階で、必要なものから順に整えれば間に合う段取りです。

TicketMeは、チケット販売の多言語対応、Alipay・WeChat Payを含む決済、QRチケットでの入場を一つのプラットフォームでまとめています。認知から購入導線、入場までを別々のツールで組む必要はありません。インバウンド対応の進め方を詰めたい場合は、まずチケミー資料請求バナーから相談してみてください。