- thumbnail_title: チケット海外販売のやり方|決済と集客の整え方を解説
海外向けにチケットを売ろうと英語ページを用意しても、問い合わせは増えるのに購入完了の通知は増えない主催者がいます。決済画面まで来ると、購入が止まるからです。
東京都産業労働局は、海外からの購入に対応できていない公演がインバウンド需要を取りこぼしていると指摘しています。英語対応より先に、海外カードとゲスト購入が通る決済を固めることが優先です。
この記事では、決済を言語対応より先に固め、客層のいる場所へ情報を届ける順序を、実装事例も交えて主催者向けに示します。自分の公演でどこから着手すべきか、判断してみてください。インバウンド対応を何から手をつけるか全体像で整理したい場合は、以下も参考になります。
▶ インバウンド対策!チケット・イベント主催者が最初にやること
外国人がチケットを買えない壁は何か
日本の電話番号や住所がなく、アカウントが作れません。海外の知人にコンサートチケットを買わせたくても、この一点で止まる相談が知恵袋に残っています。つまずいた場所は販売ページではなく、会員登録と本人確認という決済の一歩手前でした。
サイトが日本語にしか対応していない
台湾や繁体字圏のファンが、Xで流れてきた公演発表からたどり着くケースは珍しくありません。会員登録フォームは日本語表記だけで、認証画面は日本の電話番号を求めてきます。
英語ページを用意していても、決済画面や会員登録フォームに進んだ途端、表示は日本語へ逆戻りします。入口だけが多言語で、購入の核心部分は日本語から動きません。
海外発行のクレジットカードが通らない
オンラインのカード決済は、3Dセキュアが2025年3月末を期限に義務化されました。JCB・VISA・Mastercardのブランドであっても、3Dセキュアに対応したカードでなければ決済画面で弾かれます。国内発行の楽天カードでさえ弾かれたのに、別のカードで認証パスワードを入力したら通った、という報告があるほど審査は厳格です。海外発行カードでは、この認証がそもそも届かない形でつまずきます。
海外にいる購入者には、もう一つ壁があります。カード会社が送るワンタイムパスワードが、手元の端末に届かないケースです。カードの限度額でもブランドでもなく、認証コードを受け取れるかどうかでつまずきます。
電話番号認証やコンビニ発券が前提になっている
登録の入口で待ち構えるのが、電話番号のSMS認証です。認証が必須のサイトでは、海外の携帯番号に認証コードが届かず、登録が完了しないまま決済画面にすらたどり着けません。この認証コードは、アフリカや中東の一部、アメリカの一部で届きにくいことが知られています。
もう一つの壁が、チケットの受け取り方法です。コンビニ発券は操作画面が日本語だけで、端末の操作も国内在住者向け。来日するファンには、受け取りの段取りそのものが組めません。
買えない状態を放置すると主催者に何が起きるか
正規ルートで買えなかった海外のファンは、そのまま諦めるか、代理購入や非正規のリセールへ流れます。どちらに転んでも、主催者の手元にたどり着くのは本来のファンではありません。誰が来場するのかが見えないまま、席だけが埋まっていきます。
諦めた海外ファンの売上と来日需要をまるごと逃す
現に、海外のファンが公演情報にたどり着いても、会員登録と決済の途中で弾かれると、代理を頼むほどでもないと判断して予定から外します。来日の目的が一つ消えるだけで、主催者に落ちるはずだった売上も一緒に消えます。厄介なのは、この取りこぼしが数字に残らないところです。買えなかった層は購入データにも問い合わせ履歴にも現れず、来なかった客としてすら記録されません。
その結果、何人が入り口で去ったのかを主催者は知らないまま、席は埋まったように見えます。
海外カードとゲスト購入が通る正規の導線を整えれば、この層を収益として取り戻せます。
正規で買えない外国人が代理購入や非正規リセールに流れる
正規ルートで買えなかった外国人が頼るのが、日本在住の知人への代理購入です。来日する海外の知り合いに代わって買えないか、という相談も実際に寄せられています。支払いだけ立て替えてもらい、名義は代理人のまま公演当日を迎えます。
そのため、主催者の手元に残るのは代理人の氏名と連絡先だけ。誰が来場するかは見えなくなり、その席に座るファンの国籍も購買履歴もつかめません。集めたはずの顧客データは、実態とずれた名簿へと変わっていきます。
ただし、代理を頼んだ側が金銭リスクを負う点は変わりません。名義違いのまま入場を迎えるトラブルの芽も、そこに残ったままです。
外国人名義のチケットが本人確認で入場を断られる
実際に、非正規のリセールで外国人名義のチケットを手に入れた買い手は、本人確認のある公演で名義が一致せず、入場を断られます。女性名義で注文したのに、届いたのは読み方も分からない外国人名義のチケット。キャンセルもできず、泣き寝入りになったという相談もあります。
これは買い手だけの問題では終わりません。入り口で足止めされた客をさばくのは会場スタッフの仕事です。断られたファンの不満は、公演そのものへの評価に跳ね返ります。
正規で買えない層が残るかぎり、こうした名義違いのチケットは非正規ルートで流通し続けます。転売対策の網に空いた穴が残り続けます。
海外で買える販売の仕組みをどう整えるか
海外のファンが最初にぶつかるのは、支払い画面でカードが弾かれる瞬間です。英語ページを整え終えてから、海外発行カードに未対応だと気づく主催者もいます。
売れる時期は、告知の直後に集中します。順番を取り違えると、一番売れるタイミングを逃します。だからこそ、英語化より決済まわりを先に固めるのが順序です。
海外発行クレジットカードが通る決済から確認する
決済代行がどのカードブランドに対応しているか、契約前にここを最初に確認します。日本のファンだけを想定した決済設定のままでは、海外発行カードは購入まで進めません。VISA・Mastercardなら多くの決済代行で通りますが、UnionPay(銀聯)の可否で中国本土からの決済は分かれます。PayPal・Alipayへの対応も、購入完了率を大きく左右する要素です。
購入ボタンを押した来場者が、支払い画面でエラーに遭う瞬間。別の手段が見つからなければ、戻ってはきません。海外発行カードでは、国内で入力しない発行銀行名の指定や、特定カードだけ弾かれる挙動に戸惑う人もいます。使い慣れた一枚が通らないだけで、来場者はそこで手を止めます。
そのため、対応ブランドとゲスト購入の可否こそ、英語ページの整備より先に固める部分。ゲスト決済で会員登録なしに買えるかどうかも、あわせて見ておきたい点です。登録フォームの途中で離脱されると、その一件は記録にも残りません。
決済画面まで多言語で表示されるか確認する
英語で表示されるのはトップページまで、という購入サイトは珍しくありません。海外販売でつまずくのは、その先が何語で出るかです。トップは英語でも、決済の入力欄や購入確認メールが日本語のままだと、支払い直前で何を入れればいいか読めなくなります。カートまで進んだ来場者ほど、ここで止まるのは痛い離脱です。
だからこそ、決済画面と確認メールまで多言語で届いているかを確認します。9言語に対応したプラットフォームなら、英語圏・繁体字圏・韓国語圏の来場者が、購入の最後まで自国語で進めます。訪日客に多い韓国語や繁体字圏の表示も、その中に含まれるでしょう。
販売通貨と為替手数料を確認する
販売通貨とは、来場者のカードに実際に請求される通貨を指します。プラットフォームによっては、この販売通貨が開催国の通貨のみに固定という設計。日本開催なら円建てで、それ以外は選べません。
もっとも、通貨の固定そのものより、海外カードの為替手数料の方が来場者には響きます。海外カードでの支払いは、交換レートに為替事務手数料が上乗せされた発券国通貨での引き落としです。同じ席でも、手元では数百円ぶん高くつくでしょう。米ドルなど自国通貨で表示できれば、購入のハードルは一段下がります。
手数料と固定費を開催頻度に合わせて選ぶ
一方で、手数料の重さは、開催の回数で意味が変わります。
- 大手プレイガイド系: 販売・発券・決済で合計10〜15%程度
- 海外決済対応の新興プラットフォーム: その半分以下で収まるケースが多い
100万円を売れば、差し引きは数万円から十数万円ぶん開きます。
年に数回しか催事を開かない主催者だと、月額固定費が発生するプラットフォームはコストが見合いません。売上のない月にも、固定費だけが出ていくためです。
海外販売を年に1〜2本だけ試すなら、率だけの従量課金型。逆に、公演が多く一回の売上も大きいなら、固定費を払っても率の低さで元が取れます。開催の頻度と一公演の規模を、手数料表と並べて見比べます。
QRコードでスマホから受け取れる電子チケットを選ぶ
チケットの受け取り方も、海外の来場者では詰まりやすい場所です。コンビニのキオスク端末は、日本語前提の操作画面で並んでいます。海外から来たファンにとって、受け取りそのものが手間です。
そのため、スマホに表示するQRなら、端末の操作も来日後の発券も要りません。購入したその画面が、そのまま入場券です。もっとも、受け取りが電子化されても、入場時の本人確認は別の壁として残ったままです。
当日の入場ゲートでは、本人確認に引っかかった外国人来場者が日本語のやり取りで列になります。受け取りから入場までを日本語の操作に頼らない設計にしておけば、少なくとも受け取り段階でのつまずきは解消です。QRチケットの発券や入場運用の詳細は、こちらでも扱っています。
▶ QRコード電子チケットとは?使い方・入場の流れ・デメリットなど解説!
海外のファンにチケット情報をどう届けるか
RED(小紅書)は月間アクティブユーザーが3億人を超え、訪日を控えた中国のファンが来日前に何を見て回るかを決める起点になっています。JNTOによると2025年の訪日客は韓国が945万人、中国が909万人、台湾が676万人と続きます。
客層がどの国にいるかで使うチャネルは変わり、K-POP系なら韓国、アニメやゲーム系なら英語圏と繁体字圏、中国の客層ならREDへと、届け先ごとに入口を選ぶことになります。海外在住のファン個人へ販売方法自体を案内したい場合は、こちらの整理も役立ちます。
▶ 海外在住の人に向けてチケットを海外販売する方法とは?おすすめの販売方法を紹介!
RED(小紅書)で中国のファンに公演情報を届ける
公演情報のスクリーンショットが会場入り前夜のグループチャットで回り、翌朝には現地払いのつもりで来場する中国人ファンがいます。中国のファンにとって公演情報が最初に回る場所は、REDのタイムラインです。写真とレビューが積み上がる場所で、来日前の下調べから当日の動き方まで共有されます。
JapanTicketはREDのSHOPページからチケット購入をECサイト感覚でできる仕組みを、日本で初めて用意したとされます。情報を見た流れのまま、同じ画面で決済まで進める設計です。
もっとも、拡散の起点がREDでも、決済導線が別のSNSや口コミの中で止まっていれば話は変わります。情報だけが先に広がり、買える場所が見つからないまま当日券を求めて会場に向かうファンが出ます。情報の拡散力と、購入導線の設置は別の作業です。
Instagram・TikTokの広告を対象国に絞って配信する
InstagramとTikTokの広告は、配信先を国や地域の単位で絞り込めます。国内のMAUはInstagramが6,600万人以上、TikTokは4,200万突破です。この数字の大きさは国内の話で、実際の設定では日本を外して届け先の国だけを指定できます。
たとえばTikTokのSpark AdsやInstagramのパートナーシップ広告なら、インフルエンサーの投稿をそのまま広告に転用できます。公演発表の翌日、Instagramの韓国語広告を見た海外のファンが、韓国語の購入ページに着地し、そのまま決済を終えます。
Google広告で訪日に関心の高いユーザーに配信する
公演と客層が重なる国だけを狙って広告を出せるとしたら、どこまで絞り込めるでしょうか。Google広告なら、配信する地域を国や都市の単位で指定できます。海外に住んでいて日本旅行への関心が高いユーザーだけに絞り込めるのが強みです。
韓国のファンを狙うなら、広告文も着地ページもそろえるのは韓国語です。言語がそろっていないと、クリックはされても買われずに離脱します。
チケミーで海外販売した事例
海外販売の事例として紹介されるのは、飲食店や観光施設が中心で、ライブや興行での実例はまだ数えるほどしかありません。言語と決済を販売画面の両面でそろえた興行となると、さらに限られます。
Lemino BOXINGを9言語・USD建てで先行先着販売した
そこで、2026年5月、東京ドームで開催されたLemino BOXING(井上尚弥×中谷潤人のダブル世界タイトルマッチ)を、チケミーがグローバル先行先着で販売しました。対応は9言語で、海外発行カードに加えApple Pay・Google Pay・Alipayが使え、USD建ての設定もできます。海外のファンが自国の通貨感覚でチケットを手に入れられる環境です。
主催者側の負担は、チケミーの販売手数料5%と、初期費用も月額費用もかからない設定です。ただし、これは購入者ではなく販売する側にかかる費用。他社の10〜15%と並べると、5%という水準は判断しやすいでしょう。
言語も決済も、公演の販売画面でそろえてから走り出せます。海外販売の相談はチケミーの問い合わせ窓口から受け付けています。
まとめ
海外に住むファンや訪日客に自社公演を届けるとき、先に固めておきたいものがあります。一つは情報を届ける場所、もう一つは買える仕組みです。中国本土ならRED、台湾などの繁体字圏や欧米ならInstagramやTikTokと、届け先の国でチャネルは変わります。
決済とチャネル、どちらを先に整えるかは開催の頻度で判断が変わります。海外販売を年に1〜2本だけ試すなら、決済は従量課金型で最小限に抑え、チャネルは公演発表のタイミングに合わせて客層を絞って告知すれば足ります。公演数が多く海外客の比率も高いなら、決済の土台を固めたうえで、チャネルごとの広告運用まで作り込みます。言語対応は、この2つを固めたあとで十分間に合います。