VTuberや配信者がファンに向けてデジタルグッズを作って売る動きは、ここ数年で急速に広がっています。デジタルチェキやボイスグッズ、限定動画といったアイテムは、在庫を抱えるリスクがほぼありません。
物販のようにTシャツやタオルをまとめてつくらなくてもPCひとつで作れるため、活動初期から始めやすい収入源になります。ただし、販売プラットフォームに並べるだけでは売れません。
誰にどう届けるか・いくらで売るかが実際の売上を分けます。この記事では、デジタルグッズの種類・作り方・集客・価格設定の現実を解説しており、何を作ってどこで売るかの判断基準が持てます。
デジタルグッズとは
デジタルグッズとは、画像・動画・ボイス・文章などをデジタル形式で配布するアイテムの総称です。個人勢VTuberの間で、こうしたデジタルグッズを作って売る動きが広がっています。
デジタルグッズとデジタルコンテンツの違い
同じ動画でも、誰でも見られるものはデジタルグッズになりません。VTuberが普段から出している配信のアーカイブや投稿動画は、視聴者なら誰でも開けます。これはデジタルコンテンツであって、売り物のグッズとは呼べないでしょう。
ところが、見られる人を限った瞬間に扱いが変わります。YouTubeのメンバーシップ加入者限定動画や、ファンクラブ内限定動画は、デジタルグッズになります。誰でも見られるか、お金を払った人だけが見られるか。ここがグッズとコンテンツの分かれ目。
ボイスや画像も同じです。配信で流したボイスは無料で耳に入ります。そのため、購入した人だけがダウンロードできるボイスデータにして初めて、販売できるグッズになります。
デジタルグッズの種類
デジタルグッズは作成のハードルが低く、価格を抑えてもファンが手を出しやすい商品です。なかでもボイスグッズはファンからの人気が高く、画像・限定動画・文章と並んでよく出品されています。
ボイスグッズ
ボイスグッズは大まかにいくつかの種類に分かれます。たとえば自己紹介ボイスは、配信冒頭の挨拶や自己紹介を30秒〜1分にまとめたボイスです。初配信の自己紹介をクオリティを上げてまとめ直すところから始められます。
月や季節に沿った季節ボイスは、クリスマスボイスやバレンタインボイスが代表例。聴いているリスナーと付き合っているシチュエーションを想定したシチュエーションボイス、添い寝ASMRのようなASMRもこの仲間に入ります。
スマホの録音アプリでも作れる気軽さに加え、推しVtuberが自分に向けたセリフを読んでくれるという需要にぴったり当てはまるため、作る側と聴く側の双方にメリットがあります。自己紹介ボイス以外は台本を0から作る必要があるので、難しく感じるかもしれません。手間がかかるぶん丁寧に作り込むライバーは少なく、完成度を上げれば差別化できます。
限定動画
限定動画もデジタルグッズになります。メンバー限定やファンクラブ内だけで公開する動画は、普段の配信とは切り離した特別な一本として売り物になります。
普段とは違う姿を披露したり、ファンだけにという特別感を持たせた動画には、それだけの価値があります。動画制作や編集ができる人なら、特定のファンに向けたメッセージ動画を販売する形も選べるでしょう。
電子書籍・文章
文章を書くことが得意な人は、電子書籍や有料noteもデジタルグッズとして販売できます。具体例としては、Vtuber活動のノウハウや実体験をまとめた指南書、料理系Vtuberのレシピ本、Vtuberを主人公にした連載小説など。特化系Vtuberとして活動している人なら、自分の持つ知識や経験を文章化するだけでも価値が出るので、買いたいと考える層は多いでしょう。
文章が苦手な人でも、チェキ風画像やイラストをまとめて画像集・写真集にして売る方法があります。
デジタルチェキ
画像データ形式のグッズは、デジタルグッズの中でも特に種類が豊富です。デジタルチェキとは、自身のアバターにポーズを取らせてチェキ風に仕上げた画像のこと。イラストやスマホ待受・PC壁紙、アイコンリングなども画像系グッズに入ります。コンビニのコピー機で印刷するネットプリントに登録し、ブロマイドとして配る形も広がってきました。
たとえばVtuberは身につけるアイテムとアバターの親和性が高く、ここで写真のバリエーションを大きく増やせます。アバターを着替えさせたり、ネコミミのような特殊アイテムを装着するだけで、同じ立ち絵から何種類もの画像が作れます。デザイン作業はアイビスペイントのような画像編集アプリで完結し、立ち絵などのビジュアル素材と背景素材を組み合わせて書き出すだけで一枚が仕上がります。
自分で作る時間が取れない場合や、クオリティを高めたい場合はデザイナーへの依頼という手もあります。とはいえ、依頼料は立ち絵や一枚絵などのイラストに比べれば安く済むことが多く、画像系グッズは種類の幅が広い分だけリスナーの満足度も高く保てるでしょう。
デジタルグッズを販売するメリット
物販のグッズには、ほとんどの場合で最低ロット数が設けられています。1個から発注できる業者でも、個数を増やすほど1個あたりの制作費が下がるため、10〜50個でまとめて依頼する人がほとんどです。手元に在庫が残ります。デジタルグッズには、この前提がそもそもありません。
在庫を抱えず損失が出にくい
Tシャツやタオル、マグカップを作るには、基になる製品や材料を買うところから始まります。注文が入れば発送の作業も発生し、その都度の手数料もかかります。売れ残れば材料費はそのまま損失。デジタルグッズは1つ作ってしまえば、あとは複製で済みます。
ここに在庫という考え方は出てきません。購入者はダウンロードで受け取って完結するため、在庫管理も発送も不要です。物販のように「10〜50個刷ったうちの何個が売れるか」を読む必要がありません。
そのため、出すかどうかを迷っているうちに刷った在庫が損失に変わる、という物販特有のつまずきが起きにくくなります。1個も売れなくても、抱えるものがありません。
配信機材だけで作れて利益率が高い
デジタルグッズは、すでに持っている配信機材だけで作れます。画像なら編集ソフト、ボイスなら録音用のマイク。物販のように基になる製品や材料を買い足す必要がありません。
追加費用がほぼかからないまま販売まで進めます。だから売れた分はそのまま手元に残り、利益率は高くなります。元手をかけてから回収する物販とは、お金の流れが逆向き。低コストで作れて、しかも利益率が高いという組み合わせが成り立ちます。
ファンとの継続接点ができる
限定動画、メンバーシップ限定の配信、ファンクラブ内だけの限定コンテンツ。デジタルグッズは、こうした「ここでしか受け取れないもの」を届ける形になります。
グッズを買う人は、推しに貢献したいと考えている層です。一度きりの売り切りで終わるより、こうしたコンテンツを継続して供給するほうが、固定ファンがつきやすくなります。ボイスを月ごとに出す、限定の写真集を季節ごとに配る。供給が続くほど、ファンとの接点も切れません。
もっとも、ファンに継続して届けるには売る場所の選び方も関わってきます。事業者がファンへ直接届ける形については、後の章でも触れます。
デジタルグッズの作り方と販売の始め方
デジタルグッズはどれも、簡単なソフト操作さえ覚えればライバー自身で作れます。画像もボイスも、必要なのは編集ソフトと録音ソフトくらい。新しい機材をそろえなくても手元のスマホやPCで完結します。
種類ごとに確認すべきサイズや書き出し形式があり、そこさえ間違えなければ完成度は安定します。
画像グッズのサイズと書き出し形式
画像グッズは、画像編集アプリ(アイビスペイントなど)で指定サイズのカンバスを作り、背景素材と立ち絵を配置して、PNGまたはJPGで書き出すという流れです。サイズはグッズの種類で決まっていて、ここを合わせるかどうかで仕上がりが変わります。
たとえばアイコンリングは縦450×横450pxで作り、PNGで書き出します。このとき背景透過は必須。透過していないと、アイコンに重ねたときに四角い枠が見えてしまいます。
デジタルチェキはL判で縦1600×横1121px、もう一回り大きくしたいなら2L判の縦2721×横1600pxで作成しましょう。チェキやブロマイドは、コンビニのコピー機で印刷するネットプリント(ネップリ)に登録して配る形が定番です。
Xヘッダーは横1500×縦500pxが目安です。ただし、ここには落とし穴があります。スマホで表示すると左下にアイコンが被るため、ネームロゴのような切れたら困る情報を左下に置くのは避けます。
iPhoneでは中央上部もせり出して見えなくなるので、切れたら困る要素はその位置からも外しておきましょう。サイズを合わせただけで安心すると、肝心の名前が隠れたまま配ってしまいかねません。
ボイスの録り方と書き出し
ボイスグッズは、音声録音ソフトで録って、WAVまたはMP3で書き出せば完成します。スマホのボイスメモでも作れるので、マイクやミキサーは要りません。クオリティを上げたい人は機材を使って録音や編集をしますが、録って出しをそのまま配布しているライバーも少なくありません。
機材がいらないぶん、原稿はある程度用意しておいたほうが無難でしょう。自分の言葉で話すメッセージでも、読み上げがスムーズになり、録り直しの回数もぐっと減ります。文面を先に決めておけば本番で詰まりません。
販売先の選び方と外注の目安
最初の販売先として選ばれているのがBOOTHです。pixivが運営する国内最大のクリエイター向けマーケットプレイスで、利用者数が多いぶん初見の人にも見つけてもらいやすい。活動を始めたばかりで初めて売る人なら、まずBOOTHに出すところから始めれば間違いがありません。
ある程度ファンがつき所属が決まってくると、にじさんじ公式ストアやstreamart、ぶいすぽストアといった専用ストアも選択肢に入ります。専用ストアはブランドの世界観に沿って並べられる一方で、出品のハードルは上がる。初動の一本目とは性格が違います。
作るのが時間的に難しい場合や、イベントに合わせて完成度を上げたい場合は、デザイナーへの外注も検討できます。目安はヘッダーが約3,000円、アイコンリングが約2,000円。立ち絵や一枚絵のイラストに比べれば安く、時短とクオリティアップを同時に狙えます。
デジタルグッズが売れるコツとよくある失敗
公開しても全然アクセスがなく、自分だけ空回りしている感覚になった、という声は珍しくありません。デジタルグッズは在庫を抱えず低コストで始められる分、作って並べるところまでは誰でもたどり着きます。問題はその先で、つまずく場所はだいたい決まっています。
集客しないと売れない
商品ページをいくら整えても、SNSに投稿しても、売上が動かない。そういう停滞の報告で一番の課題として挙がるのは、商品の質でも価格でもなく集客です。見てくれる人がいなければ、どれだけ作り込んでも棚に並んでいるだけで終わります。
とはいえ、集客の糸口がないわけではありません。知名度ゼロのアカウントでもBOOTHで初月40個・約2万円を売った報告があり、最初の1個が売れたのは公開から5日目でした。アクアリウムというジャンルに一点特化して発信を続けたことが奏功したといいます。BOOTHにはギフト機能もあり、誰かに贈る形での購入も起きています。
ここで分かれ目になるのは、作った後にどこへ顔を出すかです。フォロワーが少ないうちは、狭いジャンルの中で名前を覚えてもらうほうが届きやすいという声が目立ちます。広く浅く発信して反応がないより、特定の界隈に深く刺さるほうが最初の購入を生みやすいといいます。ファンを増やす発信の組み立て方は、推し活マーケティングの考え方も参考になります。商品ページの改善やSNS投稿だけで変化がないなら、見せる相手と見せる場所を疑ったほうが早いかもしれません。
価格は安すぎると売れない
100円の商品はあまり売れません。たとえばBOOTHの取引データでは、アバターが5,000円台から6,000円台で最も多く売れており、ジャンルによっては安さがそのまま強みにならないとわかります。安ければ売れるという発想は、デジタルグッズではむしろ逆に働くことがあります。
実際に、2,000円で売れなかった商品を4,000円に上げたら売れた、という報告もあります。気持ちちょっぴり強気な価格のほうが好意的に捉えられた、というわけです。値段が極端に安いと、品質を疑われたり、作り手の本気度を低く見られたりしやすい。買う側は金額そのものよりも、その値付けが妥当に見えるかを気にします。
下げる方向で勝負するより、その値段に見合う中身を用意して堂々と出すほうが、結果として手に取られやすい。
続ければ積み上がる収益
デジタルグッズは1度作れば半永久的に販売でき、点数が増えるほどストック収入として増えていきます。たとえばあるデザイナーは、BOOTHで半年の総売上が108万円に達したと報告しています。月10万円から始まり、24万円でピークを迎えた推移です。
質のいい素材を投稿し続けたことが、この売上を支えています。集客と値付けの壁を越えた先では、一発当てて終わりではなく、点数を増やしながら売れ続ける状態に近づきます。すぐに結果が出なくても、作り続けた分だけ販売できる商品が増え、ストックとして積み重なります。
事業者がファンにデジタルグッズを直接売るには
ここまでは個人がアイコンやボイスを作って売る話でしたが、事業者やIP保有者がファンコミュニティに直接デジタルグッズを届ける角度もあります。アーティストや配信事務所、スポーツチームなど、すでにファンを抱えている側が限定販売やデジタル特典を自分たちの手元から出す形です。間に大手プラットフォームの審査や手数料を挟まず、ファンとの距離が近いまま売れる点が個人のC2C販売と違います。ファンとの関係を売上につなげる全体像は、ファンマーケティングの基本で整理しています。
ファンに直接売り継続収益にする仕組み
個人がBOOTHで売るC2Cと違うのは、二次流通でも収益が戻る仕組みがある点です。C2Cでは、買った人が誰かに転売しても、最初に作った側にはもう一円も入りません。一度売って終わり、その先の取引は無関係です。
ところが事業者がファンコミュニティに直接デジタルグッズを届ける仕組みなら、ここが変わります。たとえばTicketMe公式の案内によると、保有者が定価より高くリセールしたとき、その取引額の最大90%が事業者やIP保有者へ還元されます。人気が出てプレミアが付くほど、発行した側にお金が回ってきます。
ファンの間を二次流通するたびに収益が戻るため、単発の売上を積み上げる発想とは前提が変わってくるでしょう。熱量の高いファンが取引を重ねるほど続く収益になります。
会員権や限定販売との組み合わせ
事業者が扱えるのは画像やボイスだけではありません。NFT会員権や限定販売、電子チケットも、ファンに届けるデジタルグッズの一種です。保有している人だけが買える限定アイテムを出す、会員権を持つファンに特典を配る、といった売り方をコミュニティの中で組み立てられます。こうした取り組みは、エンタメ業界のDXの流れの一部でもあります。どの形が自社のファンに合うかは、扱う商品や規模によって変わってきます。
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まとめ
デジタルグッズは在庫を持たず、配信機材だけで作れて利益率も高いため、活動初期から始めやすい収入源です。デジタルチェキやボイスグッズ、限定動画など、種類ごとにサイズや書き出し形式さえ確認すれば、一人でも形にできます。
作って並べるだけでは売れません。一番の壁は集客で、見せる相手と場所を絞ること、安すぎない価格を付けること、作り続けてストックを積むことが売上を分けます。
事業者やIP保有者であれば、ファンに直接届けて二次流通でも収益が戻る形も選べます。何を誰にどう届けるかを決めるところから、デジタルグッズの売上は動きます。
