SNSや配信の反応が積み上がり、そろそろファンクラブを、と考え始めた運営者がいます。悩むのは開設の是非より、どの方式でいくら会費にするかです。
Fanicon・ROBOT PAYMENTなど専用サービス各社は、自社の仕組みへの申込ありきで手順を説明しています。方式を横並びで比較できる情報はほとんどありません。
だからこそ、専用サービス・SNSのサブスク機能・自作を横並びで比較すれば、自分の人数と活動の形に合う開設方式と会費、チケット先行販売を含めた会員特典を決められるようになります。
自分はファンクラブに向いているか
配信のコメント欄やSNSの反応を眺めながら、自分に発信し続けられる中身があるかを考える場面があります。Faniconは、目的を定め、専門知識や独自コンテンツを中心に据えることを基盤づくりの条件として挙げています。
独自コンテンツを軸にできるか
開設した瞬間に、次の更新の中身を考える作業が始まります。対象となるファン層や提供価値を設計し、その中心を保てるかが最初の分かれ目です。誰に何を渡すかが決まっていないまま開設すると、更新のたびに何を書くか迷います。
たとえば、SNSの反応が良かった話題をそのまま会員向けコンテンツに転用するだけでは、無料の発信と有料の会員特典の境目がなくなります。専門知識や制作過程など、無料の場では出していない中身を中心に据えられるかが、開設前の判断材料です。
続けるメリットが労力に見合うか
Faniconは、更新には労力がかかる分、それに見合う対価が得られる体制を検討しておくべきだとしています。配信のコメント欄の反応が良くても、それだけで更新を続ける動機にはなりません。
労力と対価のバランスが崩れれば、更新は止まり、会員はそれをすぐに感じ取ります。会費や会員数を動かす前に、まず自分が毎回どれだけ出せるかを見積もっておきます。
ファンクラブ開設までにやること
ライブ後の物販列に並ぶ顔ぶれと、配信のコメント欄の常連を重ねて数える主催者もいます。この重なりが見えてきたところで、ファンクラブ開設の検討は動き出します。
入会してくれるファンの人数を見積もる
見積もりの起点になるのは「何人が課金してくれそうか」です。Faniconによると、ファンが30〜50名程度想定できる時期は、開設検討の入り口です。数十人規模の固定ファンがついた時点で開設を検討する例もあります。
30〜50名という数字は、会費を払ってでも活動を追いたい層がすでにいるかどうかの目安です。物販列とコメント欄の常連が同じ顔なら、その重なりが入会候補の目安になります。
更新の頻度を決める
更新の頻度は、開設前にひとまず決めておくのが要点です。細かい担当分けや投稿ルールの固め方は、開設後に詰めれば足ります。
会費の額は開設した後でも調整できる一方、更新の量は毎月の活動に直結する分だけ動かしにくい部分です。だからこそ、自分が毎月出せる分量に合わせて頻度を決めておくと、後から会費を見直す余地が残ります。
入会ページに載せる情報をまとめる
入会ページには、ファンへのメッセージと、ファンクラブに込めた思いを文章にして載せます。ファンクラブ内でどんな発信をしていく予定かも、開設前にまとめておきます。
カバー画像とアイコン、入会した直後に届けるありがとうメッセージも、申込ページを公開する前にそろえておく素材です。
売上を受け取る口座情報を用意する
開設の申込前に用意しておくものが、売上を受け取る振込口座の情報です。個人名義か法人名義かで必要な項目が変わり、法人として運営する場合はインボイス番号もあわせて登録します。
振込先の名義と登録者名が一致しているかどうかも、申込の際に確認される点です。
告知するタイミングを選ぶ
SNSでの告知は、一度の投稿で終わらせずカウントダウン投稿を重ねて全員に届かせる方法があります。SNSを見ないファンには、公演会場で入会案内のチラシを配り、案内ブースで入会の手続きを手伝います。
オンラインとオフラインの両方に告知の場を用意しておくと、SNSの反応だけでは見えなかった入会希望者にも声が届きます。
どの方式でファンクラブを開設するか
月額課金型オンラインコミュニティの会員費取扱高は、矢野経済研究所の集計で2020年度248億円から2022年度予測580億円へ動いています。市場が広がる中で、専用サービス・SNS課金・自作という開設方式の選択肢も増えました。
ファンクラブ専用サービス
ファンクラブ専用サービスには、Fanicon、Bitfan、FANCLOVE、FANTSといった名前が並びます。交流と決済と会員管理が最初から一体になっているので、開設までの期間は短くて済みます。
各サービスの違いは、投稿の見せ方と決済の組み方です。会員限定の投稿はブログ形式に近いものもあれば、チャットのやりとりに近い作りのものもあります。決済のスタイルも同じではなく、クレジットカード一択のところと、複数の決済手段を用意したところに分かれます。
一方で、会員データの持ち方はどのサービスも似た構造です。会員情報はサービス側のシステムに置かれ、乗り換えを考えたとき名簿をそのまま持ち出せるとは限りません。手軽さと引き換えに、会員名簿の管理は自分の手元から離れます。
専用サービス以外にも、アプリ型で交流機能を強化する選択肢があります。料金相場や選び方を先に確認しておくと、比較の軸がぶれません。
▶ ファンマーケティングアプリとは?Web版との違い・料金相場・選び方を事例で解説!
SNSのサブスクリプション機能
配信の主戦場がすでに一つのSNSに寄っている場合、そのSNSの課金機能から始める選択があります。追加のアプリやサイトを覚えてもらう必要がなく、既存のフォロワーがそのまま入り口です。
その代わり、機能はそのSNSに付随する範囲に限られ、会員名簿も自分の手元には残りません。会員限定の投稿形式や通知の出し方はSNS側の仕様に縛られ、プラットフォームの規約や仕様が変われば、会員との接点そのものが変わりかねません。
サイトやアプリの自作
費用の回収が見込める規模になる前に自作へ踏み切ると、開発費と投稿サーバーの月額だけが先に出ていき、回収の見込みが立ちません。サイトやアプリの自作は、その規模に届いてから検討する方式です。
会員管理システムの導入を考える規模の固定ファンがすでにいて、大規模展開まで狙う場合には、カスタマイズ型が候補に入ります。決済も投稿形式も自由に設計できる分、運営側が背負う実装と保守の負担も大きくなるでしょう。
自作の自由度をさらに広げる方向では、NFTやトークンを使ったファン施策も検討できます。始め方や成功事例を確認しておくと、自作の設計に幅が出ます。
▶ Web3ファンマーケティングとは?成功事例・始め方を解説
ファンクラブ運営にかかる費用
費用の出方は方式によって違います。初期にまとめて払うか、月々少しずつ払うかで方式の向き不向きが分かれます。
クラウド型の月額利用料
ROBOT PAYMENTによると、クラウド型は初期登録料が無料か低価格で、月額利用料は数千円台からです。契約直後の負担はこの水準にとどまります。
もっとも、機能の拡張やカスタマイズを足すと月額は動きます。会員向けの投稿機能を増やす、決済方法を追加するといった変更のたびに料金プランが上がるケースもあります。契約時のプランのまま据え置けるかどうかは事前確認が欠かせません。
無料トライアルを設けている事業者もあります。実際の画面で機能の当たりを確認してから契約先を選ぶ形です。
パッケージ型で先に出る初期投資
サーバーの設置費用、PCの準備費用、ライセンス料。パッケージ型はここが開設前にまとめてかかり、価格帯はクラウド型より高くなります。
制作代行型のFANTTAは初期費用16万円台、月額1万6千円台からという例があります。オプション次第でここに加算されますが、ファンクラブの運営を制作からEC販売、イベントサポートまで一括で代行してもらえる分、初期費用は上がる代わりに準備の手間を外に出せます。
入金時に引かれる決済手数料
月額料金だけを見て契約先を決めると、後から差が出ます。会費は決済代行を通って入金されるため、月額利用料とは別に、取引ごとに決済手数料が引かれます。
手数料率と入金サイクルは一律ではありません。月額料金が安いサービスでも、決済手数料を含めた合計額では順番が入れ替わることがあります。
有料ファンクラブの会費の決め方
会費は、高くすれば入会の壁になり、低くすれば活動費に届きません。ファン層の負担と活動の継続、両方を満たす金額と形式を選ぶことになります。
年会費と月額会費のどちらにするか
年会費は4,000〜6,000円が主流で、特典が充実した1万円超のプランも存在します。月額プランは500〜2,000円程度が中心で、オンライン特化型は月額1,000〜3,000円になることもあります。入会金は500〜1,000円程度が目安です。
年会費型はライブのチケット抽選を優遇する形と組み合わせられ、長く応援するファンが入ります。
一方で月額型は動画やオフショットなどデジタルコンテンツ中心で、短期のイベント目的のファンも入ってきます。たとえば抽選や先行の優遇を中心にするなら年会費、コンテンツ配信を中心にするなら月額という向きの違いです。
入会金を別に取るか
入会時に一度だけ払う入会費と、継続して払う年会費や月額会費は別に設計できます。入会金を取れば初回の一括収入になりますが、入会のハードルはその分上がります。
入会金なしで年会費・月額だけにする運営も同じくらい多くあります。
無料で始めてから有料に切り替える
無料は見込みファンの育成に向きます。一方で、コアなファンへの特別感までは出せません。会員数が少ないうちは有料の効果が出にくいため、無料で育ててから有料へ移す運びを取る主催者もいます。
無料期間に何を体験してもらい、どの特典を有料化のタイミングで積み増すかを事前に決めておくと、有料化後の離脱を抑えやすくなります。
金額に見合う特典を先に決める
会員証、チケットの先行と抽選、会員限定グッズ、ファンミーティング、限定スクラッチなどから、渡せるものを先に選びます。金額はその後に決まる順番です。入会後に想像と違ったと感じさせないよう、特典の範囲は入会前に書き切っておく必要があります。特典を後から追加するのは容易ですが、先に約束した特典を減らすのは会員の反発を招きます。
会員証やグッズのように形が残るものと、抽選やファンミーティングのように機会として渡すものとでは、用意にかかる手間が異なります。特典の種類を書き出す段階で、どこまで最初から用意し、どこから会員数の増加に合わせて足すかを決めておくことが要点です。
特典の柱をどこに置くか迷ったときは、ファンマーケティングの成功事例やメリット・デメリットを見比べておくと、自分の活動に合う形が絞り込みやすくなります。
▶ ファンマーケティングとは?メリット・デメリットや成功事例、始め方など解説!
ファンクラブの会員が100人を超えたら起きること
入会と退会の処理、月々の請求、問い合わせへの返信。この3つが同じ週に重なると、表計算での管理は一気に苦しくなります。名簿の更新が1件遅れれば退会した人に誤請求が飛び、返信が1件溜まれば次の3件がそのまま積み残ります。この重なりが起きやすくなるのが、会員数がおよそ100人を超えたあたりです。
人力で回せていた入退会の反映は、この規模から追いつかなくなり、会員管理システムの導入を検討し始める運営が増えます。
継続課金には未収も付いてきます。カードの期限切れや残高不足で支払いが失敗したまま、翌月分と合わせて積み上がることがあります。決済失敗時に自動でリトライする仕組みを入れておくと、未収は目に見えて減ります。手作業の督促に頼る運営ほど、この未収は残ったままになります。
ファンクラブ会員へのチケット先行販売
人気公演の一般販売は倍率が高く、思うようにチケットが取れません。会員先行を目当てに入会するファンも一定数います。枠の分け方や抽選の選択は、ここから先の設計で決まってきます。
抽選と先着のどちらを会員特典にするか
年会費型で抽選優遇を採用した後は、その優遇枠を実際にどう配るかという別の判断が残ります。当落を抽選と先着のどちらの方式で運用するかです。
先着は会員全員に同じ時刻の競争を課します。開始時刻にアクセスが集中し、通信環境の差がそのまま結果に出ます。抽選なら結果が出るまで会員を待たせる形になり、当落の通知タイミングが運営側の負担です。会員数が少なく倍率が読みやすい公演は先着、会員数が多く倍率が読めない公演は抽選、とまず規模で仮決めしておくと判断が早くなります。
会員証を入場の受付で使う
受付で会員証を確認する仕組みがなければ、当日の特典は誰にでも渡せてしまいます。会員証はアプリで提示する形と物理カードの形があり、どちらも会員本人であることを示す証明として使います。写真つきの本人確認を求めるかどうかは、受付の手順を左右する要素です。
入場口で会員証と購入履歴を突き合わせる手間が、開場前の列の長さに出ます。たとえば突き合わせをアプリ側で自動化できれば列は短くなりますが、手作業のまま確認する運用ではその分、開場が後ろにずれます。
開設日を公演の発売日に合わせる
チケットの先行販売と同じ日にファンクラブを開設すると、「今日入れば先行に間に合う」という理由がそのまま入会の動機になります。
開設日の候補には、誕生日や結成日、ライブや舞台やテレビ出演の日、金曜や祝日、月の初日もあります。発売日と切り離して開設日を決めれば、入会の動機は複数の日に分散します。どちらが良いかは、会に何を求めるか次第です。
会員名簿につながる販売サービスを選ぶ
会員名簿と販売システムが分かれていると、先行の対象者リストを公演ごとに手で書き出すことになります。公演数が増えるほど、この作業は積み重なる一方です。
転売対策と当日の入場受付まで含めて会員先行を任せられる販売サービスを選ぶかどうかで、負担の大きさは変わります。
販売サービスの選び方そのものは、委託・SaaS・自社直販という3方式の特徴を比較しておくと判断しやすくなります。
▶ チケット販売方法は3種類!委託・SaaS・自社直販の特徴と選び方など解説!
販売枠を決める
会員限定での先行販売と抽選販売は、一般販売の前に別枠として出します。枠の大きさは、会員数と会場のキャパシティのバランスで決めます。
枠を絞りすぎると先行の意味が薄れます。会員になっても取れないという不満が募るからです。逆に広げすぎると、一般販売に回る座席が埋まらず、公演全体の売れ行きに影響しかねません。枠の大きさは一度決めて終わりではなく、公演ごとの倍率を見ながら調整します。
そのため、会員先行の枠を何日前に開けるかは、一般販売の開始時期そのものの決め方と連動します。
会員先行の枠組みと当日の入場確認まで含めて相談したい場合は、以下から問い合わせできます。
ファンクラブの更新を続けるコツ
本人がスマホから投稿できるかどうかで、開設後の続けやすさは大きく変わります。
しっかりしたコンテンツを毎回作ろうとすると、そのぶん投稿の準備に時間がかかり、更新の間隔もじわじわ空いてしまいます。普段のスマホから気軽に投稿できる仕組みにしておき、力を入れすぎない内容でも投稿として成立させます。この体制を開設前に整えておけば、あとから負担を感じにくくなります。
開設直後は頻繁だった投稿が、時間の経過とともに急激に減ると、会員は「もう更新されないのでは」と不安になります。まずは目標の更新頻度をあらかじめ決めておきます。グループで活動する場合は、誰がどのくらいの頻度で更新するかも事前に割り振っておくと、更新が滞る事態を防ぎやすくなります。
地方に行った際には食べ物の写真を必ず上げるなど、内容を決めておくルールも、ファンの期待値を無理に上下させずに更新を続ける助けになります。しっかりした企画を毎回考えなくてもよい場面もあります。ファン側は気負ったコンテンツより、カジュアルなコミュニケーションを求めていることも少なくありません。何を発信すればいいか迷ったときは、ファンに直接何を見たいか尋ねてみます。
よくある質問
個人でもファンクラブは作れますか
個人でも開設できます。
専用サービスの多くは法人契約を必須としておらず、本人確認書類と振込先口座を用意すれば個人名義のまま申し込みが進みます。
無料でファンクラブを開設できますか
開設自体は無料でも、運営がずっと無料で済むとは限りません。
初期費用0円のプランを選べば申し込みのハードルは下がりますが、会費が入金されるたびに決済手数料が差し引かれます。
好きなアーティストの非公式ファンクラブを作っても問題ありませんか
推しの写真やロゴを使って会員を集めたくなる場面があります。ただし、本人や事務所の許諾を得ていない非公式のファンクラブは、肖像権や商標をめぐるトラブルにつながるおそれがあります。
写真やロゴを使う前に使用範囲を事務所側に確認し、許諾のないまま会費を徴収する運営は避けます。
ファンクラブの会費はいくらに設定するのが一般的ですか
ファンクラブの会費は活動ジャンルや特典の中身によって幅があり、相場だけを見て金額を設定すると自分の活動と合わなくなります。
渡せる特典の量と自分が続けられる更新の頻度を先に固め、そこから逆算して金額を決める進め方をおすすめします。
申し込みから開設までどれくらいかかりますか
専用サービスであれば、申し込みから公開までは数日から2週間程度で進むケースが多くなっています。ただし審査や必要書類の不備があると差し戻しが発生するため、余裕を持ったスケジュールで進めます。
まとめ
- 開設前に決めるのは、会費より先に自分が毎月渡せる更新の分量です。SNSの反応や配信のコメントから入会してくれそうな人数を見積もり、その分量に合わせて会費の額を決める順番になります。会費は後から動かせますが、更新の量は開設後に急には増やせません。
- 方式は専用サービス・SNSのサブスクリプション機能・サイトやアプリの自作のいずれかから選びます。どの方式でも会員名簿を完全に自分の手元へ置けるとは限らず、手軽な専用サービスほど交流と決済と会員管理が一体になっている分、会員データはサービス側のシステムに残ります。
- 会費は、年会費か月額かという形式の選び方と、渡す特典の内容から逆算して決まります。数十人の会員で開設できるのは事実ですが、その会費だけで活動費のすべてを埋める規模には届きません。
- 開設後にファンクラブが続くかどうかは、会費の高さよりも、毎回渡せる更新と特典を無理なく出し続けられるかで決まります。
