イベントのチケット販売方法は、プレイガイド委託・電子チケットSaaS・自社直販の3種類です。どれにするか判断しにくいのは、手数料の数字だけでは差が見えないからです。
SaaSの手数料は3〜10%、プレイガイドは8〜10%の幅があります。しかし3択の核心の差は集客を誰が担うかと、そもそも契約の入口を越えられるかの2点で決まります。
この記事では3種類の構造的な違いと、規模・集客力・運営体制に応じた選び方を解説します。読み終えると、手数料以外の軸で自社のイベントに合う方法を判断して、販売の申し込みに動けます。
チケット販売方法は3種類ある
チケット販売方法は大きく3つに分かれます。プレイガイドへの委託販売、電子チケットのSaaS導入、そして自社サイトやSNS・Googleフォームを使った直販です。
委託販売は集客力を借りるかわりに契約のハードルがあり、SaaSは審査なしですぐ始められ、直販は手数料がかからないかわりに運用をすべて自分で抱えます。手数料の数字だけで並べると、3つの差は見えにくいもの。選ぶ基準になるのは、集客の負担と契約のしやすさのほうです。
プレイガイド委託販売
プレイガイドと直接契約しようとした個人事業主や小規模の主催者が、入口で断られる場面があります。チケットぴあやローソンチケット、イープラスは、個人とそのまま直接契約しないのが原則です。ライブハウスが契約しているサービスを、ライブハウス経由で使わせてもらう流れになります。発売数の管理も会場側が握る形で、主催者がプレイガイドの管理画面を直接触れるわけではありません。
もっとも、このハードルの裏にあるのがプレイガイド側の手厚い運用です。販売ページの作成から購入対応、入金まで担当者が一通り回す体制で、主催者の手間は最小限で済みます。
上記の3大手のなかでもぴあは会員2,200万を抱え、月刊誌のような自社の告知ツールも持っています。集客の母数と告知の経路をまるごと借りられます。そのかわり、会場経由でしか販売を始められません。
電子チケットSaaS
電子チケットSaaSは、主催者が自分でイベントページを作り、公開設定まで自分で握る販売システムです。主要なプレーヤーはPeatix、LivePocket、teket、TIGETあたり。ブラウザ上でイベント名や券種、販売枚数を入力していけばページが立ち上がります。
委託販売のように会場を介す必要はありません。たとえばPeatixは審査がなく、登録したその場でチケット販売を始められます。
費用は決済手数料が中心で、おおむね3〜10%の幅。プレイガイドのように担当者がついて運用を代行してくれる仕組みではなく、ページの公開も売れ行きの管理も主催者の手元に残ります。集客の手間は自分で背負う一方、契約の入口は開いていて、思い立った日に販売を始められます。
自社サイト・SNS直販
自社サイトやSNSでの直販は、手数料を払わずに済むかわりに、決済も顧客対応も丸ごと自分で持つ方法です。たとえばGoogleフォームで申し込みを受けたり、自社のECサイトで売ったり、XやInstagramで販売リンクを直接流したりします。決済はメール先着の銀行振込やPayPay送金で回すこともあります。
ここで起きやすいのがメール先着での番号振りトラブルです。先着順に整理番号を返信していく運用だと、返信が少し遅れただけで参加者ともめます。手数料がかからないぶん、こうした手間がそのまま主催者にのしかかります。
逆に強いのが、ファンコミュニティとの距離の近さ。すでにつながっているファンのSNSへ販売リンクを直接告知すれば、最短で本人まで届きます。手数料ゼロと顧客との直接の接点を取るぶん、決済とトラブル対応の負担はすべて主催者の側に残ります。
3つの販売方法はどこが違うか
3者でいちばん開くのは、発売情報が届く人数です。委託なら数千万人の会員に流れ、SaaSと直販では自分のフォロワーから始まる。桁が違います。
手数料の数字を見比べても、この差は出てきません。ほかにも、契約の入口を越えられるか、売上がいつ手元に入るか、運営をどこまで自分で抱えるか。軸を変えると、3者の輪郭が見えてきます。
集客力で違う
たとえばプレイガイドに委託すると、ぴあ会員2,200万という母数にチケット情報が届きます。月刊ローソンや公式メルマガといった自前の告知経路も持っていて、発売情報がそのまま会員のもとへ流れていく。主催者が手を動かさなくても、まず母数の中に告知が出ます。ここが委託の一番大きな見返りです。
一方、SaaSと直販では、主催者自身のフォロワーから集客が始まります。Peatixやteketでページを立てても、その存在は自分のXやInstagram、メルマガでしか知らせられない。届く範囲は、自分のフォロワーやつながりの数から始まります。
集客の出発点が、委託で借りる会員数なのか、自前のフォロワー数なのかで分かれます。直販はその差が最も開く側で、SaaSも自分で告知する点では直販と変わりません。手数料が0円でも、客が集まらなければ売れ残る。集客の負担を背負うのは、委託では母数を貸す側、SaaSと直販では主催者自身です。
とはいえ、販売方法を選んでも席が埋まらない場合は、価格設定や告知のタイミングを見直す必要があります。
▶ イベントのチケットが売れないときに見直すべきことは?原因別の対策を解説
契約のハードルで違う
次の軸は、そもそも販売を始められるかです。個人事業主や小規模の主催者がチケットぴあと直接契約しようとすると、入口でライブハウス経由にしてくれと返されることがあります。プレイガイドは興行会社やライブハウスを通じた契約が原則で、個人がそのまま窓口に申し込んでも話が進みません。会場が契約しているサービスを、会場を介して使わせてもらう形です。
ところがPeatixは、その対極にあります。審査がなく、申し込んだその場でチケット販売ページを作れる。思い立った個人が登録し、券種と枚数を入力して、数分後には販売を開始します。委託で会場とのやりとりに時間がかかる一方、SaaSは入口がほぼ開きっぱなしです。
直販はさらに手前で、契約という関門自体がありません。自分のサイトにフォームを置けば、その日から売れます。販売を始めるまでの距離は、委託・SaaS・直販の順に短くなっていきます。
売上の手元入金スピードで違う
入金のタイミングも3者で開きます。プレイガイドはイベント終了後30〜60日後の入金が一般的で、公演が終わってから2か月近く待つこともあります。SaaSは即時から数週間で、Peatixはイベント終了後5営業日以内。自社直販は使う決済代行の入金サイクル次第で、Stripeなら週次で手元に届きます。
この差が効いてくるのは、開催前後に運営費の支払いが先行するときです。会場費や機材費を先に払い、入金は公演後。委託で待つあいだ立て替えが続いて、キャッシュフローが厳しくなることもあります。
運営の手間で違う
最後の軸が、販売を始めてから当日までの手間です。たとえばSaaSでチケットを売り出すと、コンビニ払いを忘れた、同行者と一緒に入りたいといった購入者からの問い合わせが、主催者のもとに直接届きます。そうした連絡も販売ページの公開も売れ行きの管理も、さばくのはページを作った本人です。間に入って肩代わりしてくれる相手はいません。
もっとも、プレイガイドはここがまるごと違います。販売ページの作成から購入者の問い合わせ対応まで、オペレーターが代行する運用です。払い忘れの連絡も入場の相談も、主催者の電話には鳴りません。集客の母数を借りるのと同じように、運営の手間ごと預ける形になります。
直販はSaaS以上に、決済も発券も顧客対応もすべて自分の側に積み上がります。手間を誰が持つかで見れば、委託はほぼゼロ、SaaSは半分、直販は丸ごと。直販では、肩代わりしてくれる相手は現れません。
チケット販売にいくらかかるか
費用は販売手数料の%だけでは決まりません。公演登録料、返金手数料、振込手数料、用紙代といった固定費が積み上がって、売上から差し引かれる総額が見えてきます。手数料率の一番低いサービスを選んだはずが、固定費まで足すと別のサービスのほうが安く済むこともあります。この逆転が起きるので、%の数字を並べただけでは判断材料になりません。
コストの全体構成
費用は2種類に分かれます。売上に対して%で引かれる販売手数料と、枚数や公演ごと、振込ごとに定額でかかる固定費。後者に当たるのが用紙代、返金手数料、振込手数料、公演登録料です。
たとえば電子チケットSaaSなら、決済手数料は3〜10%。これに返金1枚あたり200〜400円、売上の振り込みごとに200〜500円超の振込手数料が乗ります(サービスにより異なります)。指定席を扱うと、公演登録料が1回5,000〜10,000円ほど上乗せされます。
ここで順位が逆転することもあります。決済手数料の低いサービスを選んでも、登録料と返金費用を足せば料率の高いサービスを総額で上回りかねません。少枚数の公演ほど、この固定費が1枚あたりに重くのしかかります。
3方法のコスト感比較
実額で並べると、出方の違いがはっきり出ます。プレイガイド委託のチケットぴあは、自由席が公演登録料0円・販売手数料8%・用紙代10円/枚。指定席になると公演登録料10,000円・販売手数料10%・用紙代10円/枚で、座席指定の分だけ固定費が乗ります。
電子チケットSaaSは料率がサービスごとに違います。Peatixは4.9%+1枚99円、LivePocketは5.0%。委託系ならTIGETが8%。teketは8〜10%(セルフサーブ型)。
Peatixは枚数が増えるほど99円が積み上がっていく点を見落とせません。
どの数字が効いてくるかは売る枚数で変わります。
主要13社の手数料・固定費・振込タイミングを横断比較した記事もあります。
手数料の種類ごとの相場と計算方法を詳しく確認したい場合は以下の記事が参考になります。
▶ チケット販売のシステム利用料とは?手数料の種類と相場を解説
自社イベントに合う販売方法を選ぶ
どれを選ぶかは、イベント規模・自前の集客力・既存ファンコミュニティの有無という3点で決まります。まず規模から振り分けると、自分がどの方法を取るべきかが見えてきます。
数百枚以下の小規模イベントなら自社直販で十分
数百枚以下で売り切るなら、委託もSaaSも要りません。自社直販で足ります。
ファンクラブや常連客が既にいて、XやLINEで告知すれば席が埋まる。この規模なら、Googleフォームで申し込みを受け、銀行振込やPayPay送金で代金を回収するだけで販売が回ります。カード払いまで整えたいなら、StripeやSquareの決済代行を組み合わせる手もあります。手数料も登録料も、ほとんど発生しません。
ただし、自前運用には覚悟が要ります。メール先着で受け付けると、申込の到着順をどう確定させるかで番号振りのトラブルが起きやすい。入金確認も、当日の本人照合も、決済まわりの問い合わせも、すべて主催者の手元に残ります。
数百枚という上限は、その手作業を自分で抱えきれる境界線。これを超えると、同じやり方ではもう回りません。
数千枚規模で集客に不安があるならプレイガイドが向く
数千枚から数万枚を埋めなければならない。しかも、自分のフォロワーやメルマガでは到底その人数に届かない。この組み合わせに当てはまるなら、プレイガイドが向きます。
会場を満席にできるかは、自前のSNSが何人に届くかにかかっています。ここで効いてくるのが、委託の持つ会員規模に発売情報を流せる集客力。月刊ローソンや公式メルマガといった経路に告知が乗り、自分の手の届かない層へチケット情報が広がります。集客に自信がない主催者ほど、この差は無視できません。
ただし、個人主催者がそのまま窓口に申し込んでも契約は通りません。プレイガイドはライブハウスや興行会社を経由した契約が原則だからです。自分でイベントを立てるなら、まず会場や興行会社にチケット委託を相談し、そこを通して販売枠を押さえます。
この手順を踏まないと、そもそも売り場に立てません。集客力という見返りの前に、越えるべきは契約の入口のほうです。
費用の内訳や契約時の注意点は委託販売の専門記事で詳しく解説しています。
▶ チケット委託販売とは?仕組み・費用・選び方をわかりやすく解説
ファンコミュニティが既にあるならSaaSがコスパで優位
委託に座席指定の公演を出すと、登録料1万円が売れる前に先に出ていきます。1枚も動いていない段階で確定する固定費です。問われるのは、この1万円を払ってまで委託の集客力を借りる必要があるか。
借りる必要がない主催者がいます。XのフォロワーやLINE公式の登録者が手元にあり、発売を知らせれば席が動く。告知すれば買ってくれるコミュニティを既に持っているなら、集客の母数を委託から借りる理由がありません。
そういう主催者には、SaaSが効いてきます。PeatixやLivePocketのようなセルフサーブ型は、申し込んだその場で販売ページを作れて、コストは売れた分の%だけ(料率はサービスにより異なります)。先に出ていく1万円がないぶん、売れた枚数に応じた支払いだけで、損益分岐点に早く届きます。集客力を借りる必要がないのに委託を選べば、その分コストが重くなるだけです。
チケット販売を始めるための準備
販売方法が決まったら、次は売り出すまでの段取りです。手を付ける順番は、規約の確認・運営体制の整備・告知計画の3つ。発売前にここを固めておくと、当日に慌てずに済みます。
最初に規約を読みます。プレイガイドなら興行会社を経由した契約になり、扱える券種や入金のタイミングは先方のルール次第。SaaSなら各社の利用規約に目を通し、手数料率や売上の振込日を発売前に確かめておきます。ここを飛ばすと、売り出してから条件が合わないと気づいて組み直すはめになります。
次に運営体制を組みます。当日のスタッフ配置、入場時のQRコード読み取り、来場者からの問い合わせ窓口。この3点を発売前に決めておかないと、人を集めても当日の入場列はさばけません。
そして告知計画です。SNS・メルマガ・フライヤーのどこで何を流すかを、発売日から逆算して並べます。チケットの発売日そのものをいつにするかも、ここで確定させます。告知が後手に回ると、席が空いたまま当日を迎えます。
準備でつまずく場所は、選んだ仕組みによって変わります。SaaSを選んだなら、チケミーは券種の設計から入場管理までを1つの画面でまとめられ、発売までの段取りを相談しながら進められます。
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まとめ
チケット販売方法は、手数料の数字が低い順に選ぶものではありません。見るべきは、客を自分でどこまで集めるかと、契約の入口を越えられるか。この2つで自社に合う販路は絞れます。
数百枚規模で常連客が見えているなら自社直販でまかなえ、自前の集客に不安があるなら会員基盤を持つプレイガイドが向きます。
SNSのフォロワーや公式LINEがすでにあるなら、集客を借りずに決済と発券だけ任せられるSaaSが残ります。
