インバウンドイベントの集客でSNS発信を増やしても、いいねは付くのに予約が入らないことがあります。チャネルを広げたのに来場者が増えないなら、対策の順番を間違えています。

観光庁の統計でも訪日客の娯楽・体験消費は伸びており、イベントへの関心も高まっています。それでも来日前や当日にチケットを買えなければ、集客の努力は来場に結びつきません。

チャネルは増やすほど有利に見えますが、予算が限られるほど絞るほうが成果は大きくなります。母国での検索から予約までの導線を1本に整えれば、どこから着手すべきかを判断することができます。

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目次
  1. いま訪日客の集客に取り組む価値
  2. 訪日客はどこで情報を見て行き先を決めているのか
  3. 訪日客にイベントを知ってもらう告知チャネル
  4. SNSで発信しても予約につながらないのはなぜか
  5. 集めた客にチケットを買ってもらう導線
  6. 来場者の口コミを生む受け入れ環境
  7. 予算や体制が限られるときの始め方
  8. まとめ
  9. よくある質問

いま訪日客の集客に取り組む価値

日本政府観光局(JNTO)の推計では、2026年5月の訪日外客数は3,559,900人に達しました。前年同月比では3.6%減ですが、韓国・台湾・米国など19の市場が5月として過去最高を記録しています。

使う金額の中身も動いています。観光庁の調査では、2026年1〜3月期の訪日外国人旅行消費額は2兆3,378億円で、そのうち娯楽等サービス費は1,195億円、前年同期比12.2%増でした。イベントやライブ、体験に払う金額が伸びている、ということです。国内のイベント産業そのものも、日本イベント産業振興協会(JACE)の調査で2025年には3兆1,798億円まで広がりました。

数字だけ見れば追い風です。ただし、会場に人を集めても、その人が来日前や当日にチケットを買える状態になっていなければ、来場にはつながりません。訪日客を集める工夫と、集めた客が実際にチケットを買える状態を整える工夫は、別々の話ではなく地続きです。だからこそ、いま取り組む価値があります。

訪日客はどこで情報を見て行き先を決めているのか

国内向けのイベントは、当日ふらりと立ち寄る人や、SNSでたまたま見かけた人をその場で呼び込めます。訪日客の動きは、この前提とまるで違います。

多くの訪日客は旅行の前に自国の言葉で入念に調べ、どこへ行くかを決めてから日本に降り立ちます。会場の前に立った時点で、行き先はもう固まっているわけです。

欧米圏はGoogleマップの口コミで判断する

欧米圏の起点はGoogleマップです。

行きたいエリアや店の名前を検索し、評価点数と口コミの件数を見て、来日前に候補を絞り込みます。星の数が並ぶなかで件数の多いところから目を通し、写真や訪問者のコメントで自分が行く価値があるかを判断する段階です。日本語が読めなくても、点数と件数は言葉の壁なく比べられます。

加えて、会場やイベントのページに評価がほとんど付いていないと、比較の土俵に上がれません。評価の乏しい会場は、来日前のこの絞り込みで候補に残りません。

東アジア圏はSNSや口コミサイトを見て決める

開店前の店に、台湾や韓国からの旅行者が11時のオープンに合わせて列に並びます。混んでいるから並んでいるわけではありません。並ぶ店は、日本に来る前から決めてきた店です。

たとえば韓国からの旅行者は、インスタグラムやブログで行く店を決めてから来ます。友人や同じ国の旅行者が上げた写真と短い感想が頼りです。店名や場所まで控えて日本へ向かいます。

点数と件数で絞る欧米圏に対し、東アジア圏は知り合いや同じ言葉で書かれた投稿を信じる色が濃く出ます。同じ訪日客とひとくくりにすると、届け方を外します。

台湾や韓国からの客を見込むなら、旅程を決める決め手は投稿に載る一枚の写真です。

共通するのは来日前に自国語で調べて決めていること

欧米か東アジアかで、見ている場所は違います。ただ共通しているのは、どちらも来日する前に自国の言葉で調べ、行き先を決めてから飛行機に乗っている点です。個人で旅程を組む旅行者が増え、この事前の調べ物はいっそう細かくなり、会場を知ってもらう勝負はすでに客が日本に着く前に決着しています。

訪日客にイベントを知ってもらう告知チャネル

訪日客に届ける手段は数えきれないほどあり、母国での下調べに使うものから旅行中に触れるものまで性質もばらばらです。同じ予算でも、どこに置くかで届く相手が変わります。

予算も英語の人員も限られるなかで全部に手を出すと、どれも薄くなります。基準になるのは、対象読者が母国で検索している最中か、来日後に接点を持つタイミングかです。着手する順番を決め、効きそうな一手から選ぶことになります。

海外の予約サイトに載せる

母国にいる段階で予約サイトの上位に見つけてもらえると、来訪の候補に入ります。宿泊やアクティビティを探す旅行者が最初に開くのが、こうしたサイトです。

代表的な海外OTAには、Booking.com、Agoda、Viator、GetYourGuideなどがあります。ViatorとGetYourGuideは体験やアクティビティに強く、日本の文化体験ツアーの掲載も多い媒体です。事業者向けの掲載登録ページを日本語で用意している社もあります。なお、各社で手数料や掲載条件は違うため、使うときは会社名を各社の公式ページで確かめてから登録するのが安全です。

実際に、SNSで認知を取りながら、OTAでの予約比率を伸ばしていく事例もあります。入り口を一本に絞らず、見つけた人がそのまま予約まで進める導線をつなぎます。

Googleマップの最適化(MEO)

旅行中の訪日客は、近くの店を歩きながらその場でマップ検索します。この検索結果に会場や店舗を見つけてもらいやすくする施策がMEO(Map Engine Optimization)です。

なお、起点になるのはGoogleビジネスプロフィールへの登録で、費用はかかりません。登録を済ませておけば、会場周辺で検索した訪日客の画面にイベントや会場が表示されるようになります。

欧米圏の旅行者は口コミの評価を重く見ます。レビューへ丁寧に返信し、写真や最新情報を載せておくと、地図上の表示順位も上がる仕組みです。英語のレビューが一枚付くだけで、次の訪日客を呼び込めます。

多言語の告知ページを用意する

訪日客の多くは、旅行前に下調べを済ませ、行き先をある程度決めてから来日します。気がかりなのは、言葉が通じるかどうかという点です。ネットで言語対応の有無を確かめてから、来るかどうかを判断します。

手順としては、まずイベントの告知ページを英語で用意します。載せる情報は、日時、料金、会場までの行き方、チケットの買い方です。しかも、翻訳ツール任せにせず読める英語にするかどうかで、伝わり方は大きく変わります。

なお、ページ自体がなければ検討の候補にすら入りません。多言語対応をどの順番で進めるか迷う場合は、最初に着手すべき項目を絞って確認できます。

インバウンド対策とは?チケット・イベント主催者が最初にやることを解説

訪日情報メディアに載せる

訪日客が旅程を組む段階で情報を集めるサイトがあります。たとえばJapan Guide.comやJapan Travel.comがその代表で、旅行前の下調べで開かれる定番サイトです。こうしたメディアにイベント情報が載ると、旅程を組む段階で存在を知ってもらえます。

掲載してもらうには、編集部やイベント投稿の窓口へ情報を送ります。日時や会場、体験できる内容は英語で伝えておくのが基本です。読み手は英語で下調べをする旅行者なので、日本語だけの案内では届きにくくなります。

現地の発信者に取り上げてもらう

現地で影響力のある発信者が、イベントを体験してその様子を自分の言葉で投稿します。すると、その発信者をフォローする同じ国の人たちの間で話題になり、そこからの来訪が動きます。

効くのは、美しい映像そのものより、発信者が現地で驚いたり戸惑ったりした瞬間の生々しいリアクションです。自分たちで発信するより、現地の目線で語られたほうが同じ国の人には強く届きます。

オフラインの接点をつくる

オンラインだけが接点ではありません。来日後や旅程を作る途中で触れる接点として、空港や駅の交通広告、観光案内所との連携、海外旅行博への出展などがあります。

実際に、個人旅行者は現地のリアルな情報を求めて観光案内所を訪ねます。とはいえ、手を広げるほど一つひとつが薄くなるので、母国での検索から会場までを一本でつなぐ一手から始めます。

SNSで発信しても予約につながらないのはなぜか

渋谷のハチ公前でカメラを構えても、何も撮れずに終わる日があります。SNS発信を続けても、いいねは付くのに予約が1件も入らない主催者は多くいます。原因は投稿の量ではなく中身にあります。

自己満足の投稿は反応があっても予約に届かない

きれいに撮れた街並み、映える構図の一枚。手応えはあっても、外国人の予約という行動にはなかなか届きません。見栄えだけを狙った投稿は、いいねが付いても予約には結びつきません。

いいねは投稿の見栄えへの反応で、予約は行動への反応です。ただし、発信する側は反応の数をそのまま成果と取り違えがちです。数字が伸びても、来場や申し込みにはひもづかないままです。

予約につながるのは体験の瞬間が伝わる投稿

Shibuya bar hoppingというワードを入れた動画投稿で100万再生を記録した例では、そこからツアーの予約が一気に増えています。再生数と予約が初めてまっすぐつながった事例です。

この事例で最も反応があったのは、美しい街並みの映像ではありません。初めて日本酒を飲んだ外国人ゲストの、驚きの表情です。景色そのものは世界中のどこにでも流れています。

ですが、その人が何を口にして、どんな顔をしたのかは、その場でしか撮れません。見る側は、自分がそこに立ったときの気分を先に味わえます。整った景色より、体験の瞬間が写り込んだ一枚のほうが予約に届きます。

大きなハッシュタグだけでは埋もれる

投稿にタグを付けるとき、#Japanのような大きなタグだけでは、投稿数が多すぎて目に留まりません。そこで、#Japanで母数の広さを取りつつ、そこにイベント固有のタグを重ねます。

むしろ投稿数の少ないタグのほうが、それを探している人の目に留まりやすくなります。大小を組み合わせて、狙った相手に届きます。

集めた客にチケットを買ってもらう導線

集客に成功しても、チケットが買えなければ来場はゼロです。見てくれた人が、その場で買えるか。ここで多くの主催者が取りこぼします。

客がまだ母国にいる段階で、予約と支払いまで済ませてもらう状態を狙います。

チケットページを多言語で用意する

チケットページの言語対応ひとつで、買う客と離れる客が分かれます。訪日客は、注文や購入の場面でも言葉が通じるかを気にするからです。日本語だけのページは、読める人にしか届きません。

最初に、英語で最後まで読み切れる購入ページを用意します。券種と日時、料金、入場方法が英語で理解できれば、多くの訪日客はそのまま手続きに進めます。翻訳の細かいやり方は専用ページに譲りますが、着手の一歩目はここです。

言語で足切りされた客は、内容を見る前に去ります。

来日前に購入まで終わらせる

母国からの問い合わせは来ていたのに、当日その客の姿が見当たらないことがあります。取りこぼしが起きる場所の多くは、支払いの段階です。

集客できても、現地でしか買えない状態だと、来場には結びつきません。興味を持った客は、母国にいるうちに支払いまで終えたいと考えます。現地に着いてから当日券を探すとなると、売り切れや行列のリスクを負うからです。

そのリスクを避けたい客は、確実に買える別のイベントへ流れます。母国で予約と決済が完結するなら、その客は来日前に来場を確定させられます。

そのため、決め手は母国にいる段階で座席と支払いを済ませられる状態です。ここが用意できていないイベントは、集客の努力を来場に変えきれません。

発信で作った熱は、買えないとわかった瞬間に冷めます。すでに海外に住んでいる人へ向けて販売する場合は、また別の売り方が向いています。

海外在住の人に向けてチケットを海外販売する方法とは?おすすめの販売方法を紹介!

海外の決済手段に対応する

客が買う直前で離れる原因の一つが、決済のつまずきです。使えるカードやキャッシュレス決済が画面に示されていないと、購入前に離脱します。手が届く支払い方法が見えないだけで、注文をやめる客がいます。

たとえば、欧米圏はクレジットカード、東アジア圏はスマホのキャッシュレス決済が中心です。国によって毎日使う手段は違い、それが並んでいれば客は迷わず最後まで進みます。見慣れない方法しかないと、そこで画面を閉じます。

訪日外国人向けの販売メリットや導入施設、注意点まで詳しく知りたい場合は次の記事が参考になります。

インバウンドチケットとは?訪日外国人向け販売のメリット・導入施設・注意点など解説!

告知から決済まで直結させる

投稿を見て気持ちが動いた直後、購入ページまで迷わず進めるでしょうか。SNSやメディアでイベントを知った瞬間が、買う気持ちの最も高いときです。間に検索や入力をはさむほど、客は離れていきます。

興味を持った画面から購入ページまでを、ひと続きにつなぎます。リンクをたどれば、券種の選択と支払いにそのまま入れる作りです。この滑らかさが、熱が冷める前の購入を後押しし、母国で気持ちが高まった瞬間を来場につなげます。

来場者の口コミを生む受け入れ環境

訪日客を受け入れる環境の整備は、その場の来場者への対応で終わりません。掲示や案内の一つひとつが、来た人の満足がきっかけとなり、まだ会っていない次の来場者を呼び込む働きを持ちます。特別な広告費をかけずに集客へつながる、費用対効果の高い一手になります。

Wi-Fiや決済手段のロゴ掲示が選ばれる目印になる

店頭にFree Wi-Fiのステッカーが貼られ、利用できるクレジットカードやキャッシュレス決済のロゴが並んでいます。個人で旅する訪日客は、こうした目印を頼りに、安心して入れる店を探します。言葉が通じるか、手持ちの手段で支払えるかは、店の外からロゴを見るだけでわかる情報です。

掲示があるだけで、店に入る前の不安がひとつ消えます。だからこそ、ロゴのステッカー一枚が、数ある競合のなかから選ばれる決め手になります。事前に確かめられる情報が何もなければ、個人旅行者はそもそも足を止めません。

一枚の口コミ写真が次の客を呼ぶ

英語メニューを撮った写真が、GoogleマップやSNSの口コミに一枚あがります。助かったという趣旨の短い言葉が添えられ、同じ国から来る次の旅行者の目に留まる一枚です。公式の案内文より、同じ立場の人が現地で残した投稿のほうが強く届きます。

店側が広告を出さなくても、満足した一人の投稿が次の来場者を運んできます。撮影されることまで想定して受け入れの環境を整えておく価値があるからです。英語メニュー一枚、ロゴのステッカー一枚が、そのまま口コミの写真になり、次の来場者を呼び込んでいきます。

予算や体制が限られるときの始め方

英語を話せるスタッフはいません。広告に回す予算もありません。それでも訪日客を集めたい主催者は、最初の一手をどこに置くかで手が止まります。

チャネルを全部やろうとすると、一つひとつが中途半端になります。予算が限られるほど、着手する順番を絞る判断が要ります。

まず整えるのは母国からの予約導線

母国からの予約導線を、最初に整えます。

予算が限られるほど、母国にいる段階で予約も決済も終わる導線を最初の一手にします。多くの訪日客は旅行前に自国の言語でリサーチし、訪問先をある程度決めてから来日します。来日してから探すわけではありません。出発前の段階で予約枠が埋まっていく流れです。

実際に、旅行前にオンラインで席と支払いを済ませてもらえれば、来場はほぼ確定に近づきます。現地で当日券や現金精算に頼ると、言葉が通じるか不安なまま購入をあきらめる客も出ます。母国での検索から予約完了までを1本でつなぐ設計が、取りこぼしを減らします。

人手をかけずに多言語対応するには

スタッフ全員が外国語を覚えるのは、時間も労力もかかります。接客のたびに通訳を立てるのも、長くは続きません。負担を下げる順番は決まっています。まず人ではなく、予約ページと決済画面から多言語にすることです。

そのため、まず予約ページと決済画面の言語表示に手を付けます。ここが読めれば、注文の場面で言葉が通じるかという不安が減り、母国にいる段階で購入まで進めます。現場のスタッフが全部を背負う必要はなく、対面での会話はそのぶん最小限で回せます。

まとめ

訪日客は来日前に自国の言葉で調べ、行き先も支払いも母国にいるうちに決めます。だからこそ集客の勝負は日本に着く前に終わっており、告知の広さより、知ってから買うまでが途切れないことで来場者数が変わります。

予算や人手が限られる主催者ほど、施策を並べる前に母国から予約と決済まで進める入口を1つ整えてください。その1本ができてから、Googleマップの評価やSNSの発信を積み増していけば、同じ発信量でも来場につながる割合が変わります。

まずは自分のイベントのチケットページを、英語で最後まで購入できる状態にするところから始めてみてください。

よくある質問

英語対応できるスタッフがいなくてもインバウンド集客はできますか

できます。接客の英語力よりも先に、予約ページとチケット購入画面の表示を英語対応させれば、注文の場面で言葉が通じない不安を減らせます。

現場での対面のやり取りは最小限で済むため、スタッフ全員が外国語を話せなくても取り組めます。

訪日客には母国にいる段階でチケットを買ってもらえますか

はい、買ってもらえます。決済まで完結する英語のチケットページを用意すれば、来日前の旅程を組む段階で座席と支払いを済ませてもらえます。

現地に着いてから当日券を探す不安を避けたい旅行者は多く、事前に確定できる選択肢があるほど購入に進みやすくなります。

海外のクレジットカードやスマホ決済に対応する必要はありますか

必須ではありませんが、対応していないと購入直前で離脱する客が出ます。国や地域によって普段使う決済手段は異なり、見慣れた選択肢がないと支払いをためらう旅行者がいるためです。

複数の決済方法を用意しておくほど、購入を最後まで完了してもらいやすくなります。

インバウンド集客に使えるツールにはどんなものがありますか

多言語対応のチケット販売システムや、SNS投稿の管理・分析ツール、翻訳支援サービスなどが代表的です。

予算や人手が限られる場合は、購入導線に直結するツールから優先して導入する順番を検討してください。

小さなイベントや地方開催でも訪日客は集められますか

集められます。都市部かどうかや規模の大小に関わらず、母国からの検索で見つけてもらえる情報と、オンラインで完結する購入導線があれば来訪の候補に入ります。

知名度に頼れないぶん、来場者の口コミや現地の発信者からの紹介で認知を広げる形が向いています。