北海道の雄大な自然や独特の文化に惹かれ、多くの外国人観光客が訪れるようになりました。しかしインバウンド需要を取り込むには、ただ受け入れるだけでは不十分です。外国人観光客のニーズを把握し、戦略的な対策を講じることが重要となります。

本記事では、北海道のインバウンド観光の現状と課題を分析し、事業者が押さえるべきポイントを解説。さらに、プロモーション戦略や成功事例、にも触れていきます。インバウンド対策でお悩みの北海道の事業者は、ぜひ本記事を参考に効果的な取り組みを進めていきましょう。

目次
  1. 北海道のインバウンド観光の現状とは?
  2. 北海道のインバウンド観光客のニーズと特徴
  3. 北海道のインバウンド対策でおさえるべきポイント
  4. インバウンド観光客の誘致に向けたプロモーション戦略
  5. インバウンド対策の成功事例に学ぶ北海道の可能性
  6. 成功事例から学ぶ北海道のインバウンド対策のヒント
  7. まとめ
  8. 関連記事
  9. 参考資料

北海道のインバウンド観光の現状とは?

北海道を訪れる外国人観光客の推移

北海道を訪れる外国人観光客数は年々増加傾向にあります。北海道経済部観光局の調査によると、2022年度の訪日外国人来道者数(実人数)は約69万人に上りました。新型コロナウイルス感染拡大前の2019年と比べると71.7%減と大幅に落ち込んだものの、入国制限緩和後は回復の兆しが見られます。

過去10年間のデータを見ると、2013年の115万人から2019年には過去最高の244万人を記録。アジア圏を中心に北海道人気が高まり、インバウンド観光が大きく成長してきた経緯がうかがえます。ウィズコロナの時代にあっても、北海道の魅力は健在。各事業者の創意工夫次第で、再びインバウンド観光を盛り上げていける潜在力を秘めています。

北海道の主要な外国人観光客の国籍

北海道を訪れる外国人観光客の国籍を見ると、アジア圏からの来道者が大半を占めています。2022年度の内訳は、韓国が21万8,900人(31.7%)でトップ、次いで台湾13万4,400人(19.5%)、香港6万7,800人(9.8%)、タイ6万1,700人(8.9%)と続きます。

欧米豪からの来道者では、アメリカが3万6,600人(5.3%)、オーストラリアが3万900人(4.5%)と健闘。一方、中国は2万7,800人(4.0%)にとどまり、以前ほど多くの観光客は見られません。各国の感染状況や渡航制限の影響が如実に表れた結果と言えるでしょう。 今後はアジアだけでなく、欧米豪を視野に入れたインバウンド対策が求められます。

北海道のインバウンド観光の経済効果

インバウンド観光は、北海道経済に大きな恩恵をもたらしてきました。 北海道経済部の試算では、2019年度の道内外国人観光客の総観光消費額は4,323億円。道内の生産波及効果は約6,800億円、雇用創出効果は約5万3,000人に上ったとされます。外国人観光客の消費行動は、宿泊や飲食、交通など幅広い産業に好影響を与え、地域経済の底上げに貢献しています。

2022年度はコロナ禍の影響で外国人観光客の消費額調査が行われておらず、正確な経済効果は不明ですが、インバウンド観光が本格的に再開すれば、以前と同等かそれ以上の経済効果が見込めるでしょう。道内事業者にとって、インバウンド需要の取り込みは大きなビジネスチャンスと言えます。

北海道のインバウンド観光の課題

一方で、北海道のインバウンド観光には課題も少なくありません。 まず挙げられるのが、観光客の季節偏重です。5~10月の夏季に集中し、冬の閑散期との入込み格差が大きいのが現状。通年での安定した誘客が求められます。

また、圧倒的に道央圏に外国人観光客が集中する点も課題と言えるでしょう。美しい自然や食などの魅力を持つ他圏域への分散を促し、北海道全体で恩恵を享受する視点が重要です。受入環境の問題もクリアすべき課題の一つ。多言語対応の不足や外国人観光客のニーズに合った体験コンテンツの少なさなどが指摘されており、インバウンド対応力の底上げが急務と言えます。

新たな時代の北海道インバウンド観光の展望

新型コロナウイルスの感染拡大は、インバウンド観光に大きな影響を与えました。しかし、ウィズコロナ時代を迎え、新たな旅行スタイルが生まれつつあります。 北海道としては、大自然の中での非日常体験や、こだわりの食などをテーマにしたマイクロツーリズムに注力。少人数・分散型の滞在スタイルを提案していくことが有効でしょう。

また、デジタル技術の活用にも期待が高まります。VRを活用した事前の下見や、多言語AIチャットボットによるサポートなど、非接触・非対面のおもてなしを充実させることで、安心・快適な旅行を実現できるはずです。事業者には、ニューノーマル時代のインバウンド観光を見据えた発想の転換が求められています。北海道の魅力を最大限に引き出し、外国人観光客を呼び込む新しい仕掛けづくりに挑戦すべき時と言えるでしょう。

北海道のインバウンド観光客のニーズと特徴

北海道を訪れる外国人観光客の目的

北海道を訪れる外国人観光客は、どのような目的で旅行しているのでしょうか。 北海道経済部観光局の調査では、「自然景観の鑑賞」が最も多く、次いで「温泉入浴」「グルメ」「ショッピング」「アクティビティ体験」と続きます。雄大な自然に触れ、北海道ならではのアクティビティを楽しみ、地元グルメを堪能すること。これが北海道旅行の大きな目的となっているようです。

また、日本の生活文化体験もニーズが高まっています。民泊や農家民宿に滞在し、地域の人々との交流を楽しむ「暮らし旅」が注目を集めているのです。北海道の豊かな自然と、のんびりとした空気感が、外国人観光客を魅了しているのでしょう。事業者には、こうした観光客の目的やニーズを踏まえた商品やサービスの開発が求められます。

国籍別の北海道旅行の特徴と傾向

外国人観光客の北海道旅行には、国籍によって特徴があります。 韓国や中国、香港、台湾などのアジア圏は、春夏秋の自然を楽しむ傾向が強く、特に新緑や紅葉の時期の人気が高いようです。また、韓国からは積丹半島や支笏湖、洞爺湖といった道央の自然スポットへの訪問が目立ちます。

一方、欧米豪からの観光客は、ニセコを中心としたスキーリゾートでのウィンタースポーツ目的が多い傾向に。自然との一体感を味わえるパウダースノーが高く評価されています。近年はグリーンシーズンにもラフティングやトレッキングなどを楽しむ姿が見られ、通年型のリゾート地としての人気が高まっています。

また、アメリカやオーストラリアからは、より長期の滞在型旅行者が増えているのが特徴。ゆっくりと広大な北海道を周遊し、アウトドアやグルメ、文化体験を満喫する過ごし方が定着してきました。国や地域によって志向するスタイルが異なる点を理解し、それぞれに合わせたアプローチを行うことが重要と言えるでしょう。

北海道のインバウンド観光客が求める体験

外国人観光客が北海道に求めているのは、日常では味わえない特別な体験です。 大自然の中でのアクティビティはその代表格と言えるでしょう。ラフティングや乗馬、カヌー、熱気球など、雄大な景色を身体全体で感じられるアウトドアが人気を博しています。

また、北海道ならではの文化体験へのニーズも高まっています。アイヌ文化の村を訪れ、伝統舞踊やムックリ演奏を楽しんだり、バター作りなどの酪農や農業体験に参加したりと、北海道の暮らしに触れ合う体験型観光が注目を集めているのです。さらに近年は、「サウナ」に関心が集まっています。森の中の野外サウナで自然を感じたり、海に面したサウナでリラックスしたり。北欧文化との親和性の高さから、外国人観光客を魅了しているようです。

こうした自然や文化、暮らしが融合した体験コンテンツの造成が、インバウンド対応に欠かせないポイントと言えます。外国人観光客の心に残る特別な思い出づくりをサポートする視点を持つことが、事業者に求められているのです。

外国人観光客に人気の北海道の観光スポット

外国人観光客に人気の北海道の観光スポットとしては、札幌市、函館市、小樽市など、道央圏の主要都市が上位を占めています。ショッピングを含め、都市観光を楽しむ外国人観光客が多いことがうかがえます。

また、富良野・美瑛、知床、阿寒湖、大雪山など、雄大な自然を誇る観光地も根強い人気。ラベンダー畑や青い池、断崖絶壁の海岸線など、SNS映えするフォトジェニックなスポットは、口コミで広がり注目を集めています。

外国人観光客の間では、旭山動物園やウポポイ(民族共生象徴空間)、登別マリンパークニクスなども高い支持を得ています。動物とのふれあいやアイヌ文化の体験、海洋生物とのエンターテイメント性の高さが、満足度の高い観光スポットとなっています。 事業者にはこうした人気スポットの情報を発信しつつ、周辺の穴場スポットや地元ならではの体験もセットで提案していく工夫が求められるでしょう。

インバウンド観光客の消費行動の特徴

外国人観光客の消費行動には、国内客とは異なる特徴が見られます。まず、買い物における消費単価の高さが目立ちます。とりわけ中国からの観光客は、家電製品や化粧品、服飾雑貨などを爆買いする傾向があります。爆買いは一服したものの、質の高い日本製品へのニーズは根強く、富裕層を中心に、高級ブランド品などのラグジュアリー消費が見られます。

また、体験型消費への関心の高さも特徴の一つです。日本文化を感じられる茶道や華道、武道などの体験や、工芸品づくりのワークショップなどが人気を集めています。思い出に残る特別な体験に、お金を惜しまない姿勢が見て取れます。

さらに、免税店の活用にも注目が集まります。家電量販店やドラッグストア、百貨店の免税カウンターは、外国人観光客でにぎわいを見せています。買い物の際の会計を円滑に行えるよう、免税手続きの簡素化や多言語対応レジの導入など、受入環境の整備が進められています。

事業者には、外国人観光客の消費志向をつかみ、ニーズに合った商品やサービスを用意することが求められます。高品質な商材の品揃えやおもてなしの心を大切にしつつ、効果的な情報発信を行い、購買欲を喚起していくことが重要となるでしょう。

北海道のインバウンド対策でおさえるべきポイント

多言語対応の重要性と実践方法

北海道を訪れる外国人観光客のスムーズな旅行をサポートする上で、多言語対応は欠かせません。観光案内所や宿泊施設、交通機関、飲食店などにおいて、英語を中心とした多言語表記や通訳の整備が進んでいますが、まだ十分とは言えない状況です。

多言語対応を進めるためには、まずは外国語表記の看板やパンフレット、ウェブサイトなどを制作することから始めましょう。翻訳ツールを活用しつつ、ネイティブチェックを受けることで、正確でわかりやすい表現を心がけることが大切です。また、VR技術を使った多言語案内システムの導入や、無料Wi-Fiスポットの拡大など、ICTの活用にも力を入れたいところです。

また、外国語対応可能なスタッフの育成も重要なポイントとなります。語学研修の実施や、外国人スタッフの積極採用など、人材育成に計画的に取り組んでいく必要があります。地域ぐるみで多言語対応に取り組み、外国人観光客の受入環境を整備していくことが求められます。

外国人観光客向けの情報発信のコツ

外国人観光客に北海道の魅力を伝え、来道を促すには、戦略的な情報発信が不可欠です。 特に重要なのが、現地の旅行サイトやSNSの活用です。個人手配の旅行者が増える中、現地の口コミサイトでの評判は、旅行先選びに大きな影響を与えます。Tripadvisor、Booking.com、Airbnbなど、グローバルに展開するサイトに自社の情報を掲載し、レビューでの高評価を狙っていきましょう。

また、Instagramや微博(ウェイボー)、YouTubeなどのSNSでの発信力も見逃せません。魅力的な写真や動画を投稿し、フォロワーとのエンゲージメントを高めることで、北海道ファンを増やしていくことができるでしょう。現地のKOLを招請し、北海道の魅力を体験レポートしてもらうなど、インフルエンサーマーケティングも有効な手段の一つです。

さらに、外国人観光客向けの旅行商品の造成や、海外の旅行博でのプロモーションなども積極的に行いたいところ。市場ごとのニーズを捉えた商品企画と情報発信を実践し、選ばれる北海道ブランドを確立していくことが重要となります。デジタルシフトが加速する中、オンラインとオフラインを効果的に組み合わせた情報発信戦略をデザインしていくことが求められています。

インバウンド観光客のニーズに応える体験型観光の提供

外国人観光客の間で、体験型観光へのニーズが高まっています。北海道ならではの自然や文化、食などを活かした、特別な体験の提供が重要となります。例えば、森の中でのヨガ体験や、野生動物ウォッチングなど、五感を使った自然体験は、アウトドア志向の外国人観光客を引き付けるでしょう。

また、地域の人々との交流を楽しめる農業体験や、伝統工芸品づくりの体験なども好評を博しています。旅の思い出に残る特別なアクティビティを提供し、満足度の高い滞在を演出することが求められます。

コト消費志向に合わせ、体験型のオプショナルツアーを造成したり、地域の体験スポットを組み合わせたモデルコースを提案したりと、インバウンド観光客の関心を引く着地型旅行商品の開発が急がれます。地域の観光資源を掘り起こし、外国人観光客の心に響く体験プログラムを磨き上げていくことが、インバウンド対策の重要なポイントとなるでしょう。

外国人観光客に配慮した宿泊施設の整備

外国人観光客にリピーターになってもらうには、満足度の高い宿泊体験の提供が不可欠です。 まずはハード面の充実を図ることが重要でしょう。洋式トイレやシャワールームの設置、ベッドの導入など、外国人観光客が快適に過ごせる客室環境を整えることが求められます。加えて、館内のユニバーサルデザイン化や無料Wi-Fiの完備、多言語表記の充実など、利便性と快適性に配慮したサービス設計が必要不可欠です。

ソフト面の工夫も大切なポイントとなります。外国語対応可能なスタッフを配置し、コミュニケーションの円滑化を図ることが重要です。また、外国人観光客の食習慣に合わせ、ムスリムフレンドリーメニューの提供や、ベジタリアン対応の充実など、きめ細やかな配慮を心がけたいものです。部屋での祈りを想定した設えの用意など、外国人観光客の多様なニーズを汲み取った対応力が求められます。

宿泊施設は、外国人観光客の旅の拠点となる大切な場所です。北海道らしいおもてなしの心を大切にしながら、グローバルスタンダードなサービスを提供していくことが重要となります。地域の宿泊事業者が連携し、インバウンド対応のレベルアップを図っていくことが、外国人観光客の満足度向上につながっていきます。

地域の特色を生かしたインバウンド対策の事例

道南圏の函館市では、西部地区の歴史的景観を生かしたまちあるきが人気を集めています。下見板通りの赤レンガ倉庫群や、旧函館区公会堂など、異国情緒あふれる建造物が立ち並ぶ町並みを、多言語対応のボランティアガイドとともに散策できます。坂の多い函館の地形的な特徴も相まって、外国人観光客を魅了しているようです。

道東圏の釧路市では、釧路湿原の自然を生かしたエコツアーが注目されています。国内最大の湿原を舞台に、野鳥観察や散策を楽しむガイドツアーが好評を博しています。環境省のインタープリター(自然解説員)が同行し、湿原の生態系について英語で解説。自然保護の大切さを学びながら、釧路の大自然を体感できる点が評価されてる点です。

地域の観光資源に新たな光を当て、外国人観光客の関心を引き付ける着眼点が重要だと言えるでしょう。各地域が創意工夫を凝らし、特色あるインバウンド対策を展開していくことが求められていると言えます。

インバウンド観光客の誘致に向けたプロモーション戦略

海外の旅行会社との連携の重要性

インバウンド観光客の誘致を進める上で、海外の旅行会社との連携は欠かせません。 現地の有力な旅行会社と商談の場を設け、北海道への送客を働きかけていくことが重要となります。道内の観光スポットや体験プログラム、宿泊施設などを組み合わせ、満足度の高い旅行商品の造成を促進。効果的な商品PRを行い、北海道旅行の魅力を旅行会社を通じて発信してもらうことが求められます。

また、招請事業などを通じて、海外の旅行会社のキーパーソンを北海道に招き、道内視察を実施するのも有効な方法です。現地で北海道の魅力を体感してもらうことで、旅行商品の企画や販売に対するモチベーションを高めることができるでしょう。旅行博への出展や商談会への参加など、旅行会社とのリレーション構築の機会を数多く設けることも大切なポイントとなります。

連携先となる旅行会社の選定には戦略的な視点が欠かせません。送客力はもちろん、北海道との親和性の高さや、継続的なプロモーションが期待できるかどうかなど、総合的に判断していく必要があります。Win-Winの関係を築きながら、北海道ファンを増やしていく地道な取り組みが求められていると言えるでしょう。海外の旅行会社との太いパイプを築き、インバウンド誘致の基盤を強化していくことが重要なのです。

SNSを活用したインバウンド観光客へのアプローチ

デジタルシフトが加速する中、SNSを活用したインバウンド観光客へのアプローチが注目されています。Instagramや微博、YouTubeなど、外国人観光客に人気のSNSを活用し、北海道の魅力を発信していくことが求められます。

まずは、魅力的なビジュアルコンテンツの制作が重要となります。北海道の雄大な自然や美味しい食べ物、温泉などをテーマに、外国人観光客の心を掴む写真や動画を撮影。「映え」を意識した観光スポットの紹介など、フォトジェニックなコンテンツづくりを心がけたいもの。アカウントを通じて北海道の多彩な魅力を継続的に発信し、フォロワーとの親密度を高めていきましょう。

SNSの運用では、ターゲットとなる市場を意識することが大切です。中国であれば微博や微信(ウィーチャット)、欧米豪ではInstagramやFacebookなど、国や地域によって主要なSNSが異なります。ターゲットに合わせたSNSの選定と、言語や表現の使い分けが求められます。

また、現地のインフルエンサーとのタイアップも有効な手段の一つです。フォロワー数の多いインフルエンサーを招請し、北海道旅行の魅力を体験レポートしてもらうのです。インフルエンサーの発信力を活用することで、より多くの潜在顧客にリーチすることができるでしょう。フォロワーとの交流企画を実施するなど、エンゲージメントの高い運用を心がけることも重要となります。

外国人観光客の感度を捉えたSNS活用が、北海道ブランドの浸透と来道促進につながっていくはずです。SNSマーケティングの重要性を認識し、戦略的なアカウント運用を進めていくことが求められています。

北海道の魅力を伝える効果的なPR動画の制作

外国人観光客の北海道旅行への関心を高めるには、北海道の魅力を印象的に伝えるPR動画の制作が欠かせません。 雄大な自然風景や美味しい食べ物、アクティビティ体験など、北海道の多彩な観光資源を動画で紹介することで、より強いインパクトを与えることができるでしょう。

PR動画の制作では、ターゲットとなる外国人観光客の嗜好を意識することが大切です。例えば、中国や東南アジアからの観光客に向けては、ショッピングや食、自然風景を前面に押し出したダイナミックな映像がおすすめ。欧米豪からの観光客向けには、アウトドアアクティビティを楽しむ姿や、地域の人々と交流する様子など、体験型の映像が効果的だと言われています。

また、ドローン撮影を取り入れるなど、スケール感のある映像美を演出することも重要なポイントです。北海道の雄大な自然を上空から捉えた迫力のカットは、外国人観光客の心を強く揺さぶるはず。BGMやナレーションにも工夫を凝らし、北海道への憧れを掻き立てる仕上がりを目指しましょう。

制作したPR動画は、YouTubeやインスタグラムなどの動画共有サイトに投稿し、拡散を図ることが求められます。多言語の字幕を付けるなど、言語の垣根を越えて楽しめる工夫も大切。各国の旅行会社やメディアに動画を提供し、北海道旅行の魅力を世界に発信してもらうのも効果的な方法と言えます。

PR動画を起点に、外国人観光客との接点を数多く生み出していくことが重要です。動画と連動した特設サイトを制作し、より詳しい観光情報を発信したり、動画を見た人限定の旅行商品を造成したりと、動画の力を活用しながら来道促進を図っていきたいもの。インバウンド誘致に向け、戦略的なPR動画の制作と発信が求められていると言えるでしょう。

インフルエンサーマーケティングの活用事例

インバウンド観光客の誘致において、インフルエンサーマーケティングの活用が注目を集めています。北海道でも、多くの地域や事業者がインフルエンサーとのタイアップを実施しています。

例えば、釧路市は香港の人気インフルエンサーを招請し、釧路の観光プロモーションを展開。インフルエンサーが釧路湿原や幣舞橋などを訪れ、現地の様子をリアルタイムで発信することで、フォロワーの関心を集めました。釧路の食や自然の魅力がSNSで拡散され、香港からの観光客増加につながったと言われています。

インフルエンサーのSNS発信は、フォロワーへの強い訴求力を持ちます。インフルエンサーが実際に体験した感動を臨場感たっぷりに伝えることで、フォロワーに北海道旅行への憧れを抱かせることができるのです。

インフルエンサーの起用に当たっては、発信力だけでなく、北海道との親和性の高さも重要な選定ポイントとなります。アウトドアやグルメ、自然散策など、北海道の観光資源とマッチしたジャンルで人気のインフルエンサーを起用することで、説得力のある情報発信が可能になるでしょう。

SNSの発信力を最大限に引き出すためには、インフルエンサーと緊密なコミュニケーションを取りながら、綿密な撮影プランを立てることが重要。事前の念入りなロケハンを行い、北海道の魅力を余すことなく伝えられるよう、戦略的に準備を進めていく必要があります。時代の最先端を行くインフルエンサーマーケティングを効果的に取り入れながら、インバウンド誘致の突破口を開いていくことが期待されています。

海外の旅行博覧会への出展によるプロモーション

北海道の観光地としてのプレゼンスを高めるには、海外の旅行博覧会への出展が欠かせません。 世界各国で開催される有力な旅行博に北海道ブースを出展し、道内の観光スポットや体験プログラム、宿泊施設などをPRしていくことが重要となります。

例えば、シンガポールで開催されるITB Asia、韓国のHANATOUR INTERNATIONAL TRAVEL SHOWなど、アジアを代表する旅行博への出展は、インバウンド誘致に大きな効果が期待できます。会場では観光パンフレットの配布や、観光DVDの上映、クイズ大会の実施など、北海道への関心を高める多彩な働きかけを行うことが求められます。

旅行博の会場では、旅行会社のバイヤーとの商談も活発に行われます。有力バイヤーと向き合い、ターゲット市場のニーズを直接聞き出すことができるのです。事前にアポイントを取るなど、商談の場を有効に活用し、インバウンド誘致の足掛かりを築いていくことが大切だと言えます。

海外の旅行博は、メディア露出の機会としても重要な意味を持ちます。旅行専門誌やウェブメディア、テレビなどのインタビューに対応し、北海道観光の魅力を広くアピールしていくことが求められます。取材をきっかけに、現地のメディアと太いパイプを築けば、継続的な情報発信も可能になるでしょう。

より大きなインパクトを狙うなら、ジャパンブースとの連携も有効な手段と言えます。日本政府観光局(JNTO)などが出展する大型ブースと協調し、オール北海道での観光PRを展開。広域周遊ルートの提案など、他地域との連携で北海道観光の多様性を印象付けていくことも重要です。

海外の旅行博は北海道の認知度向上とインバウンド誘致に直結する貴重な機会。戦略的な出展計画を立て、ターゲットとなる市場に強力にアピールしていくことが求められています。PR効果を最大限引き出す創意工夫を重ね、世界中から選ばれる観光地・北海道を目指していく必要があるでしょう。

インバウンド対策の成功事例に学ぶ北海道の可能性

北海道ニセコ地区のインバウンド対策の取り組み

ニセコ地区は、海外からの観光客誘致に早くから取り組み、インバウンド対策の先進地として知られています。特に、オーストラリアを中心とした欧米豪からのスキー客を積極的に呼び込み、外国人観光客の満足度が高い地域として高い評価を得ています。

ニセコ地区の成功の要因は、徹底した外国人目線でのサービス提供にあります。多言語対応のウェブサイトやパンフレットを制作し、外国人観光客の情報収集をサポート。スキー場では英語対応可能なインストラクターを配置し、外国人ゲストの快適なスキー体験を演出しています。

また、コンドミニアムやホテルでは、外国人観光客の長期滞在ニーズを捉え、キッチン付きの部屋やランドリー設備など、快適な滞在環境を整備。外国人目線での細やかな配慮が、リピーター獲得につながっているのです。

グルメの面でも、外国人の嗜好に合わせた飲食店の充実が図られています。ニセコ地区では、多国籍料理レストランやベジタリアン向けの飲食店も数多く軒を連ねています。ムスリムフレンドリーメニューを提供する店舗も増え、多様な食のニーズに応える受入環境が整っているのが特徴です。

さらに、夜遅くまで営業するバーやナイトクラブなども充実。スキーを楽しんだ後の多彩な過ごし方を提案し、外国人観光客の満足度を高める工夫が光ります。 「住んでよし、訪れてよし」の観光地づくりを地域ぐるみで進めることで、欧米豪からの人気を不動のものにしているのです。

ニセコ地区の取り組みは、北海道全体のインバウンド対策のロールモデルとなり得るはずです。外国人目線でのサービス提供、快適な滞在環境の整備、多様なニーズに応える受入環境づくりなど、学ぶべきエッセンスは数多く。地域の個性を活かしながら、ニセコモデルを北海道各地に横展開していくことが期待されます。

函館市の外国人観光客誘致戦略の成果

函館市は、外国人観光客の誘致に力を入れ、着実に成果を上げています。 2019年の外国人宿泊者数は約52万人泊で、5年前の2014年から3.1倍の宿泊者になっています。アジアを中心に函館ブランドへの注目度が高まっているのです。

函館市の強みは、歴史的景観とグルメを軸とした観光コンテンツの訴求力の高さです。特に、西部地区の異国情緒あふれる街並みは、外国人観光客を引き寄せる大きな魅力となっています。

そうした函館の魅力を効果的に発信していくため、函館市はSNSマーケティングに力を注いでいます。Instagramなどでは、街並みやグルメの魅力を印象的に伝える写真を連日投稿。特に若者を中心に高い注目を集めており、フォトジェニックな観光地としてのイメージが定着しつつあります。

また、外国人観光客の利便性を高める取り組みにも注力しています。市内の観光案内所では、英語対応可能なスタッフを配置し、旅行者のサポートを行っています。飲食店では外国語メニューの導入が進むなど、言葉の壁を越えて函館の魅力を味わえる環境づくりが進んでいます。

2016年には、欧米豪の富裕層をターゲットとしたラグジュアリーツアーの造成にも着手。少人数限定の特別感あふれるツアーを提供することで、新たな顧客層の開拓を図っています。富裕層の囲い込みは、単価アップと長期滞在につなげる有効な手段。より深く函館の魅力を味わってもらう取り組みとして注目されています。

函館市の誘致戦略からは、地域の魅力を再発見し、ターゲットに刺さる形で発信していくことの大切さが見えてきます。歴史とグルメ、景観など、地域に埋もれている観光資源を引き出し、多角的なアプローチで外国人観光客の関心を引き寄せる。そんな函館市の地道な努力は、北海道全体のインバウンド対策の指針になるはずです。

富良野・美瑛地区の体験型観光の人気の理由

富良野・美瑛地区は、体験型観光のメッカとして、外国人観光客から高い支持を得ています。 特に人気が高いのが、美しい農村風景の中で行うアクティビティ体験です。

例えば、ラベンダー畑での花摘み体験は、多くの外国人観光客を魅了しています。紫の絨毯が広がるラベンダー畑を散策し、思い思いの場所で花摘みを楽しむ。どこまでも続く花畑と、採れたての花束を手に記念撮影する姿は、旅行者のSNSで数多く投稿され、富良野・美瑛の象徴的な風景となっているのです。

また、国の重要文化的景観にも選定された丘陵地帯での乗馬体験も高い人気を誇ります。のどかな農村風景を馬上から眺めながらのトレッキングは、北海道らしい開放感を味わえる格別の体験。馬とのふれあいを楽しみながら、雄大な景色に心を洗われる時間を過ごせるのです。

富良野・美瑛地区の体験プログラムの醍醐味は、地域の自然や文化、人々の暮らしに直接触れられる点にあります。単なる観光ではない、日本の農村の原風景を五感で味わえる体験は、外国人観光客の心を強く動かしているようです。

富良野・美瑛地区の体験型観光は、地域の観光事業者の創意工夫の賜物とも言えるでしょう。 地域資源をいかに観光コンテンツ化するか。そのアイデアと実行力が、外国人観光客を惹きつける体験を生み出しているのです。旅行者の関心を的確に捉え、地域の本物の魅力を体感できるプログラムを造成する。体験型観光で結果を出している富良野・美瑛地区の取り組みは、北海道のインバウンド対応に大きなヒントを与えてくれます。

釧路市の自然を生かしたインバウンド対策の特徴

釧路市は、雄大な自然を前面に押し出したインバウンド対策で注目を集めています。 とりわけ、釧路湿原を軸とした自然体験プログラムは、環境意識の高い欧米豪の観光客を中心に人気が高まっているのです。

釧路湿原は日本最大の湿原で、ラムサール条約にも登録された貴重な自然環境があります。そんな雄大な自然を満喫できるガイドツアーが、釧路市の目玉コンテンツとなっています。湿原の中を木道で散策するネイチャーウォークでは、ガイドから動植物の生態について英語で解説してもらえるため、環境保全の大切さを学びながら湿原の神秘的な魅力を味わうことができます。

また、釧路川河口でのカヌー体験も人気のアクティビティの一つ。ガイドの指導の下、雄大な自然を背景にカヌーを漕ぐ爽快感は、外国人観光客を魅了してやみません。カヌーから眺める釧路の自然は、まさに圧巻の一言。写真に収めて旅の思い出にしたくなる絶景が広がっているのです。

釧路市は近年、エコツーリズムにも力を入れています。自然との共生をテーマに、環境に負荷をかけない観光スタイルの提案です。ゴミの持ち帰りを徹底したり、環境保全活動に観光客を巻き込んだりと、サステナブルな視点を重視しています。「ただ楽しむだけでなく、地域の自然を守る当事者になってほしい」。そんなメッセージ性の高い取り組みが、共感を呼んでいるようです。

釧路市のインバウンド対策が示唆するのは、地域の独自性を際立たせることの重要性でしょう。他の地域にはない自然を、他の地域にはない切り口で魅力発信する。そんなオンリーワンの取り組みが、外国人観光客の心を動かす武器になるはずです。「ありのままの釧路湿原を、未来に残していくために」。サステナブルな観光の実践は、北海道観光の新たな価値を生み出していく原動力となるに違いありません。

成功事例から学ぶ北海道のインバウンド対策のヒント

ニセコ地区、函館市、富良野・美瑛地区、釧路市。インバウンド対策で成果を上げる各地の取り組みからは、北海道が目指すべき方向性が見えてきます。

最大のポイントは、地域の特性を活かした観光コンテンツの磨き上げです。 外国人観光客のニーズを汲み取りながら、自然や食、アクティビティなど、地域の魅力を最大限引き出す着眼点が問われます。画一的な観光では選ばれません。地域ならではの資源を、地域ならではの視点で価値化していく。そんな真摯な姿勢が、外国人観光客の心を揺さぶるのです。

同時に、外国人目線に立ったサービス提供の徹底も欠かせません。 言葉の壁を超える多言語対応はもちろん、Wi-Fi環境の整備や旅行者目線の情報発信など、あらゆる場面で外国人観光客の利便性を高める工夫が求められます。「我々は本当に外国人観光客の立場に立ってサービスを提供できているか」。常に自問自答を繰り返しながら、インバウンド対応力を磨き上げていく必要があるでしょう。

加えて、地域が一丸となって誘致に取り組む体制づくりも重要なポイントです。 行政、観光事業者、住民が一体となって外国人観光客を迎え入れるなどの地域ぐるみのおもてなしの心が、リピーター獲得の大きな原動力となるはずです。インバウンド対策の先進地では、官民協働での誘致活動が活発に行われています。オール北海道で、戦略的なインバウンド対策を進めていくことが何より大切だと言えます。

インバウンド対策の成功事例は、北海道が目指すべきゴールを示してくれています。 各地域の強みを再認識し、地域資源を磨き上げる。外国人目線でのサービス提供を徹底し、満足度の高い観光体験を提供する。そして、地域の総力を挙げて誘致に取り組む。一朝一夕では結果は出せません。地道な努力を積み重ね、選ばれる観光地・北海道のブランドイメージを構築していく。そんな息の長い取り組みが、今の北海道に求められているのです。

まとめ

本記事では、北海道のインバウンド観光の現状と課題、外国人観光客のニーズ、事業者が押さえるべきインバウンド対策のポイントについて考察してきました。

コロナ禍で大きな影響を受けたインバウンド観光ですが、徐々に回復の兆しが見えつつあります。市場の動向を注視しながら、アフターコロナを見据えた誘致戦略を練っていくことが重要となるでしょう。

各事業者には、本記事で紹介したインバウンド対策の着眼点を参考に、自社の課題解決に向けた実践的な取り組みを期待したいと思います。

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参考資料