紙の申込書とExcelで参加者管理を続ける主催者が、次に検討するのがイベントDXです。展示会・EXPO出展ではなく、自社イベントの運営とマーケティングのデジタル化を指します。

自治体DX推進協議会の調査でも、文化・スポーツ分野でDXに取り組む自治体はまだごく一部です。QRコード受付を入れただけで満足し、データを次の施策に使えていないことが一因です。

デジタル化とDXの違いを踏まえ、企画・当日運営・事後フォローのどのフェーズから着手すべきか判断できる状態を目指します。自社で最も手作業が重い工程から検討してみてください。

イベントDXとは

イベントDXとは、デジタルツールで運営プロセス全体を再設計し、参加者データの収集・分析・活用まで一貫して行える体制へ移行する取り組みを指します。ここで扱うのは展示会EXPOへの出展ではなく、セミナーやカンファレンスといったイベント運営とマーケティングのデジタル化です。

線引きははっきりしています。たとえば受付をQRコード化するだけならデジタル化にとどまります。

取得したデータをMAツールに連携し、フォロー自動化まで設計するとDXの領域に入ります。データを次の施策につなげられるかが、分かれ目です。

ただ国内の歩みは速くありません。一般社団法人自治体DX推進協議会の調査では、文化・スポーツ分野のDXに取り組む地方自治体はわずか11.6%にとどまるとされ、都道府県では75.0%が着手する一方、村ではゼロという結果も出ています。イベントを主催する自治体・団体の足並みは、まだ大きくそろっていません。

デジタル化とDXを分けて考える発想は、チケット販売の現場にもそのまま当てはまります。予約システムを入れただけで終わらせず、購入データを収益化まで結びつける工程は、こちらでも整理しています。

チケット販売のDXとは?導入手順・課題・収益化など解説!

DX化でイベント運営はどう変わるのか

これまでのイベントで運営側が手にできた数字は、来場者数と当日のアンケート回答くらいでした。誰がどのブースに立ち寄り、どの説明に時間を割いたのかは、担当者の記憶と印象に頼るしかありません。イベントDXで変わるのは、この見えなかった部分がデータとして残る点にあります。運営の判断材料が、感覚から記録へと置き換わっていきます。

参加者データの把握

受付にQRコードのリーダーを置くと、来場者が入場した瞬間に誰がいつ会場へ入ったかが記録に残ります。紙の受付表を後から入力し直したり、申込リストと突き合わせたりする手作業はなくなります。

集まった記録を過去のイベントとあわせて見ていくと、どの申込チャネルからの参加が多いか、どの業種や役職の参加率が高いかが見えてきます。従来の名簿で分かるのは性別・職種・エリアといったハード情報までで、当日その人がどう動いたかは残りませんでした。たとえば、どのセッションを長く視聴したか、どこで離脱したかという行動ログや視聴ログが、ここに加わります。

同じ一人の来場者でも、氏名や所属だけが残る場合と当日の動き方まで残る場合とでは、次に打てる施策の細かさがまるで異なります。なぜなら、行動の記録があるからこそ、個別のニーズに踏み込めます。

なお、こうした参加者データを一元管理する仕組みを自社で持つか、外部システムに任せるかは、規模やイベントの開催頻度で判断が分かれるでしょう。料金相場や比較の視点は、以下で詳しく解説しています。

来場者管理システムの選び方と料金相場とは?規模別の比較ポイントを解説

見込み顧客の育成(ナーチャリング)

イベントで集めたデータをMA(マーケティングオートメーション)やSFAにつなぐと、終了後のフォローを自動で動かせます。たとえばセミナーの視聴時間が長かった参加者にはサービス資料を送り、途中で離脱した参加者にはアーカイブ動画を届ける、といった出し分けが可能でしょう。

見込みの度合いに応じて接し方を変え、興味が薄い相手にはすぐ営業をかけず様子を見ます。データを起点にした見込み顧客の育成は、こうした出し分けの積み重ねで築かれます。

フェーズ別のDX施策

イベントDXは、特定の工程だけで完結しません。企画から集客、受付、当日運営、事後フォローまで、ライフサイクル全体で回す取り組みです。

すべてを一度に変える必要はありません。自社の課題が最も大きいフェーズから優先着手すると、投資に対する手ごたえが見えやすくなります。取り組む施策は、企画・集客、受付・当日運営、事後フォロー・分析の3フェーズに分けられます。

企画段階で過去データをどう使うか

企画段階の起点は、過去イベントの参加者データと満足度アンケートです。どのテーマの参加率が高かったか、どの業種からの申込みが多かったか。数値で確認してから企画を立てると、集客の見通しが立てやすくなります。

テーマ設計やターゲット設定も、勘ではなく実績からの逆算です。たとえば、前回申込みが伸びた業種があれば、近い層が今回の主対象になります。反応の薄かったテーマは、無理に残しません。

さらに、集客フェーズで効くのは、過去の参加履歴や興味関心によるリストの分割です。全員へ一斉配信するのではなく、関心の近いグループごとにメッセージを変えます。狙いは、一斉配信より高い開封率とクリック率です。

配信リストを分割するかどうかで、集客の初動の伸び方は変わってきます。企画段階の数値の見極めと、この分割設計はセットで考える設計事項です。

当日を支えるQR受付

受付は、QRコードによるチェックインが基本になりました。来場者はスマホに表示したQRをかざすだけです。受付はそれで完了です。

そのため、紙の名簿への照合がなくなり、受付スタッフの人数を最小限に抑えられます。実際に、マネーフォワードはQRコードの読み取り機器と事前予約機能を組み合わせ、オフラインEXPOの受付を運用しています。事前予約とQRがつながれば、当日その場での記入や確認は要らず、行列も生まれにくいでしょう。

当日はセッション終了直後に、スマホへアンケートを配信します。紙のアンケートより回答率が上がり、結果は自動集計されます。記憶が新しいうちに答えてもらえる点も見逃せません。

終了後はデータでフォローを自動化する

終了後は、データの回収と可視化を仕組みにします。集客数や参加率、アンケート満足度、商談化数を、一元的に見えるようにするのが第一歩です。そのうえで、イベントごとにKPIダッシュボードを用意し、前回との比較ができる形にしておきます。手集計を挟まない分、次の企画に取りかかるまでの時間は短くなります。

こうして数字が前回と並べば、次に直す一手を決めやすくなります。フォローの自動配信は、この比較を毎回止めずに回すための仕組みです。

自動配信の内容そのものも、まだ手を入れられる部分が残っています。特に開催直後に送るお礼メールは、送るタイミングと文面次第で開封率と次回の参加意欲が変わってきます。

イベントのお礼メールは24時間以内に送る【シーン別例文あり】

イベントDXの進め方

イベントDXは、優先度の高い領域から小規模に始め、手ごたえを確かめながら広げていくと定着しやすくなります。着手順を誤ると、社内の合意がないままツールだけ入れて形骸化する、という失敗に陥りがちです。

社内で認識をすり合わせる

現場チームがデジタル化に積極的でも、経営上層部が理解を示さないと予算も権限も下りてきません。とはいえ上層部が旗を振っても、日々の運営を回す現場が抵抗を覚えれば、新しいやり方は根づかず形だけで終わってしまいます。両者の足並みが揃わないと、途中で計画は止まります。

そのため、なぜデジタル化が必要でどんなメリットが生まれるのかを、上層部と現場の双方で話し合っておきたいところです。認識のズレをなくしてから着手すれば、後戻りは減らせます。

順番を焦って先にツールだけ入れる進め方では、この足並みは揃いません。次に洗い出すべきは、実際にどの業務へ時間を取られているかという事実です。

工数がかかっている業務を洗い出す

受付、参加者管理、メール配信、アンケート集計、データ入力。業務ごとに所要時間と課題を書き出すところから始めます。

どこに時間を取られ、どこでミスが起きているかが見えないまま導入を進めると、ツールが的外れになります。集客に課題があるのにアンケート集計ツールを入れても成果には結びつきません。まず自社のどの工程が重いのかを洗い出し、そこにデジタル化を当てる。この洗い出しが終わって初めて、次のツール選定が的を絞れます。

自社の課題に合うツールを選ぶ

選定時に確認するのは、自社の開催形式への対応、MA/SFAとの連携、そして操作性の3点です。オンライン、オフライン、ハイブリッドのどれを主に開くかで、必要な機能は変わってきます。

比較検討だけで決めず、無料トライアルやデモを実際の運用フローに沿って動かしてから導入すると、現場で使えないという失敗を避けられます。ここまで社内の合意と課題の洗い出しが済んでいても、ツールは一気に全社展開せず、小さく試すところから始めます。

小さく試して広げる

いきなり大規模イベントに新しい仕組みを適用せず、社内セミナーや少人数のウェビナーで試験運用し、オペレーションを一度通しで確認します。最初の3ヶ月は受付のQR化と参加者管理のデジタル化に絞り、次の3ヶ月でMA連携とフォロー自動化に取り組む、といった段階的な計画を描くと、無理なく定着します。

最初から全社的に導入すると、想定外のトラブルが本番の大規模イベントで表面化しかねません。試験運用の期間中に見つかった不具合や運用ルールの穴を、本番前に一つずつ潰しておきます。

なぜツール導入だけではうまくいかないのか

ツールを一つ入れれば運営が回り出すわけではありません。パンフレットを作って配る、イベントを打つ。その繰り返しのまま、効率化の手前で足踏みし、予算だけが消えていく現場があります。

QRコードを貼りに行く作業は自動化されない

イベント前日の夜、スタンプラリーのQRコードの貼り場所を間違えるという事態は、実際の現場で起きています。

実は、原因はささいなずれにすぎません。システム会社とイベント会社、そして現場のどこかで認識がわずかにずれるだけです。それだけで、貼り間違いは起こります。

そのため、受付をデジタルに置き換えても、QRコードそのものは誰かが物理的に貼りに行かなければなりません。前日に刷り上がったコードを会場のどこに固定するのか、その判断と手作業は人の側に残ります。

貼り換える作業も同じです。位置を直す、剥がして貼り直す、そうした現場対応はツールの外側にあり、自動化されません。画面の中がスマートになっても、会場を歩いて手を動かす部分は変わりません。

同じ施策ばかりで成果につながらない

支援の現場で繰り返し出てくる悩みは、どこに行ってもデジタルスタンプラリーだらけで差別化できないという点です。施策が横並びになり、来場者から見て代わり映えしません。ツールを導入したこと自体は、もう珍しくありません。

ところが、成果に届くかどうかはそこから先で決まります。同じ施策を並べるだけでは、来場者の反応や次の企画に使えるデータは積み上がりません。手応えを感じられないまま、時間と費用だけが流れていきます。導入で満足して止まった運営ほど、この停滞に陥りがちです。

効率化は入り口にすぎません。データを起点に運営そのものを組み替えて、はじめて成果が動き出します。

チケミーで実現するイベントDX

チケミーが提供する電子チケット・NFTチケットは、前段で挙げた受付・当日運営フェーズのデジタル化にそのまま重なります。来場者はスマホに表示したチケットをかざすだけで入場でき、受付に人手を大勢張り付ける必要はありません。紙の半券をやり取りしていた工程が、そのまま入場データの取得に置き換わります。

さらに、誰がいつ入場したか、どのチケットがどう動いたかが記録として残る点が、入場口を電子化しただけとの違いになります。NFTチケットであれば発行から二次流通までの動きを追えるため、転売の実態や再販価格まで見えてきます。

こうして集まった参加者データは、次回の集客ターゲットの絞り込みや、券種ごとの価格設計を見直す判断材料になります。NFTチケットを保有する参加者向けの独自コミュニティを作れば、NFTマーケティングとは?仕組みと活用パターン・始め方を解説にもそのままつなげられます。

もっとも、電子チケットを導入するだけでイベントDXが完成するわけではありません。取得したデータを誰が見て、次の企画や集客の施策にどう接続するかまで運営側で決めておく必要があります。

自社のどのフェーズにデジタル化を当てるか、どの業務から着手するかで迷う場合は、チケミーの導入相談・お問い合わせから相談できます。