推し活とは、自分の好きな相手を応援し、日常の中で楽しむ活動です。対象はアイドルや俳優だけでなく、アニメキャラやVTuber、刀剣や建築物にも広がり、世代を問わず楽しむ人がいます。
推し活は2021年に流行語大賞へノミネートされ、呼び方として定着しました。市場規模は8,000億円(ビデオリサーチ調べ)で、幅広い相手と楽しみ方が誰にでも合う理由になっています。
推し活に決まった正解はありません。活動内容や楽しみ方の幅を知り、無理しない距離感を自分で見つければ、始めるか迷っていた人も日常に取り入れて長く楽しめます。
推し活とは?
「推す」は「推奨する」や「押す」から派生した言葉とされ、そこに活動をつけたのが推し活です。好きな相手を応援する行為そのものは新しくありませんが、この呼び名が広く使われるようになったのは、ごく最近のことです。
推し活という言葉の由来
推し活とは、好きなアイドルや俳優、アニメのキャラクターを応援する活動を指します。オタ活、推し事と呼ばれることもありますが、指している中身はほとんど変わりません。呼び名が違っても、やっていることは同じです。
もっとも、言葉が新しいだけで、贔屓の相手に熱を上げる文化そのものは古くからありました。江戸時代には歌舞伎が大衆の娯楽として広まり、人気役者を描いた役者絵は、現代のブロマイドのように買い求められた時代もあります。応援する相手や手段が移り変わってきただけで、根っこにある気持ちは今も昔も変わりません。
推す対象は3タイプに分かれる
推す対象は、大きく三つに分けられます。一つ目は実在の人物で、アイドルや歌手、俳優、声優、YouTuber、コスプレイヤーなど、生きている人が幅広く含まれます。二つ目は漫画・アニメ・ゲームのキャラクターやVTuberといった非実在の人物、三つ目は刀剣や仏像、建築物、鉄道など生き物ですらない対象です。
ファンの間では、この違いを2次元、2.5次元、3次元と言い分けます。生身の人間を追いかける人もいれば、絵の中のキャラクターに心を寄せる人もいます。同じ相手でも、かわいくて仕方ない人、成長を母性のような目で見守る人、あんな風になりたいと憧れる人と、向ける想いは一人ひとり違います。応援する相手に決まりはなく、自分が好きだと思えるものであれば対象は何でもいいという、間口の広さです。
推し活でよく使う基本用語
推し活の会話には、独特の言い回しがいくつも出てきます。グループの特定のメンバーだけを応援することを単推し、全体や全員をまとめて応援することを箱推しと呼びます。〇〇担という言い方もあり、特定の相手を熱心に応援する人が使う呼び名です。
推しの魅力を周りに広めることは布教と呼ばれ、信仰の言葉が転じておすすめを伝える意味で使われています。用語を知らなくても推し活は始められます。ただ、覚えておくと同じ趣味の相手との会話がぐっと早く進みます。
推し活では何をするのか
缶バッジやアクリルスタンド、痛バッグを抱えて出かける人がいれば、部屋に祭壇を組んでぬい活に没頭する人もいます。推し活と一口に言っても、やっていることは人によってまるで違います。どれをどれだけやるかは、自分の時間とお金の使い方に合わせて選べます。
グッズを集めて飾る
まず定番はグッズ集めです。缶バッジ、アクリルスタンド、アクリルキーホルダー、ぬいぐるみ、チェキ、ブロマイド、クリアファイルなど、推しの姿がプリントされたものを少しずつ手元に増やしていきます。
集めたグッズは飾って楽しみます。部屋の一角をグッズスペースにして、棚を設置する人もいます。推しのグッズだけを集めた空間は、いわば小さな祭壇です。
たとえば、手を加えて楽しむ人もいます。トレカをシールやラインストーンでデコる人もいます。缶バッジをたくさんつけたバッグは痛バッグと呼ばれ、それ自体が作品のよう。ぬいぐるみを持ち歩いて日常に連れ出すぬい活も広がっています。
ただし、グッズは次々に増えます。飾る場所も、買う費用も、気づけばふくらんでいきます。どこまで集めるかは、自分の財布と部屋と相談しながら決めるしかありません。
ライブやイベントで推しに会う
ライブや舞台、ファンミーティング、握手会など、推しが目の前にいる特別な体験を求めて会場に足を運びます。
実際に、ペンライトを振り、声を届け、同じ空間を分かち合います。そこにあるのは、画面越しでは味わえない密度です。ファンミーティングは通常のライブとは違い、推しとの近さがぐっと際立つ分、参加方法や当日の流れも独特です。
会場の外にも楽しみは尽きません。コラボカフェをめぐり、イベント限定グッズを求めて列に並ぶ人もいます。
一人で行く人もいれば、推し活仲間と集まって鑑賞会をする人もいます。同じ推しを好きな相手と語り合う時間そのものが、イベント参加の一番の楽しさです。
人気公演ほどチケットが取りにくく、先行販売の申し込み時期や種類を知っておくと、参加できる確率を上げられます。
▶ チケットの先行販売とは?種類・違い・申込方法と売り切れ後の動き方を解説
チケット代や遠征の交通費は軽くありません。何回参加するかは、それぞれのペースで決まります。
聖地巡礼で推しの足あとをたどる
ドラマの撮影地、アニメの舞台、作品ゆかりの土地をめぐる。それが聖地巡礼です。
物語の中でしか見られなかった景色が、目の前に広がります。同じ場所に立つだけで、作品との近さを肌で感じます。訪れた先では推しを連れて旅する気分で、ぬいぐるみやアクスタと一緒に写真を撮る人も少なくありません。
SNSで発信して仲間とつながる
X(旧Twitter)やInstagramで発信して楽しむ人もいます。推しの写真やイラストを投稿すれば、そこは同じファンとの交流の場です。
ハッシュタグで同じ推しの投稿を探し、気になる相手をフォローします。そこから会話が生まれ、仲間ができていきます。たとえば○周年記念や誕生日には、お祝いの投稿でタイムラインがにぎやかです。推しの魅力を伝える布教シートを作って共有する人もいます。
ただし発信すればするほど反応は気になります。無理に更新を続ける必要はなく、見る専門で楽しむのも立派な推し活です。
推しの概念を日常に取り入れる
推しの概念を日常に取り入れる楽しみ方が概念推し活です。イメージカラー(メンバーカラー)やモチーフを、暮らしの中にそっと忍ばせます。
たとえば、イメージカラーの入った服や食べ物を、つい手に取ってしまいます。ペンや小物を推しの色でそろえる人もいます。グッズそのものを持たなくても、それは立派な概念推し活です。
オタバレしたくない人にとっては、都合のいい方法でもあります。ぱっと見ではわからない概念なら、日常使いしやすいからです。派手なグッズを持ち歩かなくても、推しはちゃんとそばにいます。
なぜ人は推し活にハマるのか
推しの成功を自分ごとのように喜べます。実生活で疲れた時には、推しから元気をもらえます。推し活が続くのは、こうした感情が日常の真ん中に居座るからです。
自己肯定感が高まる
推しがオーディションを勝ち抜いたとき、ファンは自分のことのように沸きます。応援してきた相手が前へ進む姿は、もう他人事ではありません。その一歩を近くで見守れること自体が、ひとつの喜びです。だからこそ、推しの成功は、自分が選んだ時間が間違っていなかったという確かめにもなります。
たとえば、似た手応えはファン同士のコミュニティでも訪れます。長く追いかけて貯めた知識や、手に入りにくいレアグッズが周りから一目置かれる瞬間は、日常ではなかなか味わえません。
認められる機会そのものが、貴重な時間です。何気ない趣味だと思っていたものが、いつのまにか自分の居場所に変わっていきます。
毎日の生きがいになる
仕事で気力を使い果たした帰り道、スマホの中の推しを開くだけで、ふっと息がつけます。そんな夜を重ねる人は多くいます。推しの存在は、しんどい一日を切り替えるスイッチです。
次のライブで推しに会えるという予定があるだけで、平日の仕事に踏ん張りがきくこともあります。会える日までのカウントダウンそのものが、日々を回すエンジンになっている人もいるでしょう。
さらに、努力を続ける推しの姿も、毎日を押し出す力になります。前に進む相手を見ていると、自分ももう少し頑張れる気がしてくるでしょう。生きがいと呼べるほど、推しが一日の真ん中に座っている人もいます。
推し活の市場規模はどれくらいか
推し活の市場規模は8,000億円にのぼります。ビデオリサーチが2024年にまとめた推し活実態調査の数字です。
市場規模の大きさ
この規模を支えているのは、推しを持つ人の広さです。ビデオリサーチの調査では、推しを持つと答えた割合が世代別に分かれています。
- Z世代: 62%以上
- Y世代: 40%以上
- X世代: 27%以上
- 59〜69歳: 24%
実際に、特定の世代だけが押し上げた数字ではありません。流行語大賞にノミネートされてから数年でこの規模に届いており、若い世代だけの一時的な流行という見方では、この広がりを説明できません。
幅広い世代に広がっている
今しかできない参加型の体験にお金を使う人は、10代で約30%、20代で約35%、30代でも約24%にのぼります。消費者庁の令和4年版消費者白書の数字です。20代がもっとも高く、30代になると10ポイントほど下がりますが、それでも4人に1人が体験にお金を使っています。
体験を楽しむ動きは若年層にとどまりません。推しを持つ人がいるのは、50代にも60代にも。推しを持つ理由も使う金額も人それぞれで、世代でひとくくりにはできません。年代が上がるほど割合はゆるやかに下がりますが、好きな推しへ足を運ぶ人はどの世代にも残ります。
無理なく推し活を続けるための注意点
「推し活疲れ」という言葉が広がり、好きな相手を追いかけるうちに気持ちや財布が追いつかなくなることもあります。多くの人は参戦回数を重ねながら、自分にとっての適量を少しずつ見つけていきます。
自分に合う距離感を見つける
無理しない範囲で、とよく言われます。その無理しないの基準がどのくらいなのかは、言葉だけでは具体化しづらいところです。ライブに毎回行くのか、月に一度に絞るのか、線引きは人によって違います。
実際に何度か現場へ足を運び、翌日の疲れ方や出費の残り方を見ながら、自分の適量が見えてくることも少なくありません。周りが全通していても、そこに合わせる必要はありません。満足できるラインは、他人の熱量ではなく自分の感覚で決まります。
お金の使いすぎを防ぐ
推しのためならという気持ちは、アプリ内課金やグッズの追加購入を先走らせます。気づくと今月いくら使ったのか分からなくなる、そんな状態は避けたいところです。
そこで役立つのが、月ごとの推し活予算を先に決めてしまうやり方です。使える額をあらかじめ区切り、その範囲で何に使うかを選びます。イベントを優先する月もあれば、グッズに回す月もあります。上限が見えていれば、勢いで課金する前に一度立ち止まれます。
周囲に配慮して楽しむ
聖地巡礼で訪れる場所の多くは、住民が暮らす街や普段使いの店です。そのため、写真を撮るときは近隣の迷惑にならないか、会場では周りのファンの視界を塞いでいないか、周囲への配慮が欠かせません。
たとえば、撮影禁止のエリアで無理にカメラを向けたり、他の人を押しのけて前に出たりする行動は、自分だけでなく推しの評判にも跳ね返ります。ルールとマナーの範囲で楽しむからこそ、応援を長く続けられます。
マナーを守るだけでなく、続け方そのものも移り変わります。推しの引退やこちら側のライフステージの変化で、これまでの関わり方を保てなくなることもあるでしょう。少し離れるか、形を変えて続けるか、迷う時期が来るのも推し活の一部です。グッズ集めもライブ参戦も聖地巡礼も、そのときどきの自分のペースで組み合わせて続けていけます。